地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

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栄養分の取り込みを画像化

 今回、海底下の微生物が生きていることを実証できたのは、超高解像度二次イオン質量分析計(NanoSIMS)を使って、栄養分の取り込みという生命活動を直接見ることができたおかげだ。この装置は、微生物にビームをあてながらそこにある炭素や窒素などの原子を少しずつ分析し、その量をただちに画像にする。栄養分の取り込みを調べるときは、あらかじめ栄養分に分析できる原子で印をつけておいて測定した。画像を見れば、微生物のどの部分にどれくらいの栄養分がとりこまれたかすぐにわかる画期的な技術だ。
 海底下の微生物は従来の技術では分析が非常に難しい。諸野主任研究員らはすでに微生物の数を計測する技術やDNAを分析する技術も海底下仕様に新たに確立した。さらに、代謝を調べる技術も加わり、「今までになく微生物の生態に迫ることができる環境が整った」と次の掘削にむけて意気込む。2012年夏から、再び「ちきゅう」は八戸沖で掘削を行い、船上で微生物サンプルを詳細に分析する計画だ。海底には、石炭層やメタンハイドレードなどのエネルギー資源があることがわかっており、資源の生成に多くの微生物が関わっている可能性も高い。海底資源の生成や生命の進化の謎を解く鍵となるような画期的なデータが得られるかもしれないと期待される。

超高解像度二次イオン質量分析計(NanoSIMS)   炭素(13C)および窒素(15N)安定同位体でラベルされた栄養源を取り込んだ微生物細胞のNanoSIMS画像. NanoSIMS分析を利用すると最小50ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)の空間分解能で元素含有量を可視化することが可能なため、細胞一つ(約0.5-1マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ))の元素含有量の計測が可能

超高解像度二次イオン質量分析計(NanoSIMS)

 

炭素(13C)および窒素(15N)安定同位体でラベルされた栄養源を取り込んだ微生物細胞のNanoSIMS画像. NanoSIMS分析を利用すると最小50ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)の空間分解能で元素含有量を可視化することが可能なため、細胞一つ(約0.5-1マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ))の元素含有量の計測が可能

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