プレスリリース


2007年06月11日
独立行政法人海洋研究開発機構

沖縄本島南方の海底で奇妙な形態の深海生物を発見
〜新種のクシクラゲの可能性〜

海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、沖縄本島南方(約200km)の琉球海溝において撮影した画像の解析を行った結果、奇妙な形態のクシクラゲ*1の1種を発見し、既知のクシクラゲ類とは分類学的に異なる新種である可能性が高いことが判明しました。

今回解析した画像は、2002年4月5日に琉球海溝(北緯24度25分、東経127度21分:別紙)の水深7,217mの海底において無人探査機「かいこう」の訓練潜航中に撮影したものですが、本成果は、クシクラゲ類の分類系統についての見直しおよび再編を進めていく中で明らかになりました。

本成果については、今月出版される科学雑誌「Plankton and Benthos Research」の2巻2号に掲載されます。

概要

1.
この深海生物はクシクラゲの仲間で、2本の長いフィラメント(糸状の構造)の先端を海底にアンカーを打つようにして付着させ、凧のように浮いており、このフィラメントの反対側の胴体から2本の触手を伸ばし、餌となる生物を捕食していると推測される(写真A〜D)。
2.
画像を詳細に解析した結果、今回発見した深海生物は、櫛板を八本持っていることから有櫛動物門(クシクラゲ)の1種であることが判明し、2本の長い触手を持ち袖状突起や耳状突起を有しないことなどからフウセンクラゲの仲間であることが明らかとなった。しかし、これまでに知られているフウセンクラゲの仲間には存在しないフィラメントが存在し、それらを用いて海底に付着していることから、これまでに知られているクシクラゲ類とは異なる新種の可能性が高い。
3.
今回発見されたクシクラゲの生体は採取されておらず、また得られた画像からも内部構造の解析ができない。クシクラゲ類の分類・種同定を確定するためには、体内部の水管構造などを詳細に観察することが必要であるため、今後、生体の標本を採集する必要がある。

〔用語解説〕

* 1 クシクラゲ:
クシクラゲ類は有櫛動物門(ゆうしつどうぶつもん)に属し、櫛板(くしいた)と呼ばれる組織を持つ。代表的なものは沿岸にしばしば出現するウリクラゲ、カブトクラゲ、フウセンクラゲなどがある。名前に「クラゲ」と付いてはいるが、いわゆるクラゲ類(ミズクラゲ、エチゼンクラゲなど)は刺胞動物門に属し、刺胞(しほう)と呼ばれる組織をもつものであり、この二つは別のグループである。どちらも多くは体が透明でゼリー質の組織から成ることから、分類学的に門のレベルで異なっているが、どちらも「クラゲ」と呼ばれているようである。クシクラゲ類は世界で100〜150種程度の現生種が知られている。

お問い合わせ先:

(本研究全般について)
極限環境生物圏研究センター
海洋生態・環境研究プログラム 研究員 ドゥーグル・リンズィー
海洋生態・環境研究プログラム 招聘研究員 三宅 裕志
電話:(046)867-9563
研究推進室長 村田 範之
電話:(046)867-9600
(報道について)
経営企画室
報道室長 大嶋 真司
TEL:(046)867-9193