プレスリリース


2010年 8月 18日
海洋研究開発機構
宇宙航空研究開発機構

超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)による初の移動船舶からの高速通信成功について
〜深海自律型無人探査機海中ハイビジョン映像のリアルタイム伝送実験〜

1.概要

海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、次世代型の深海自律型無人探査機「MR-X1」によって撮影した海中ハイビジョン映像を超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を使用し、航行中の海洋調査船「かいよう」からJAXA筑波宇宙センターへリアルタイム伝送を行い、アジア太平洋でサービスしている既存の船舶通信に対して10倍以上の高速通信を達成しました。

2.背景

平成21年10月16日〜10月17日に実施した試験では、神奈川県三浦半島沖の金田湾に停泊中の船舶(「白鳳丸」)からリアルタイム伝送実験を行いましたが、今回は航行中船舶(「かいよう」)からより高速の伝送実験を行いました。

3.実験結果

(1)実施期間 平成22年8月10日(火)〜8月12日(木)

(2)場  所 相模湾(図1参照)、JAXA筑波宇宙センター

(3)実験概要

本実験は、平成21年度から実施しているJAXA・JAMSTECの共同研究プロジェクト「WINDSを利用した深海探査機映像の伝送実験」の一環で、東京海洋大学の協力を得て実施しました。「きずな」の小型アンテナをJAMSTEC所有の海洋調査船「かいよう」に設置()し、JAMSTECが開発する深海自律型無人探査機「MR-X1」によって撮影した海中ハイビジョン映像1チャンネルと標準画質映像3チャンネル、及び船上のハイビジョン映像1チャンネルの合計5チャンネルをJAXA筑波宇宙センターにリアルタイム伝送しました(図2参照)。映像伝送速度は最大で37Mbpsであり、これは、日本近海で船舶に提供されている衛星通信サービスにに対して10倍以上の高速通信を達成したことになります。

※「きずな」は超高速通信を実現するためKa帯と呼ばれる大容量の通信に向いている高い周波数帯の電波を使用しています。このKa帯は通信ビームの指向性が高いため、通信を行うためには衛星に対するアンテナの指向精度を±0.3度以内に保持させる必要があります。この指向の保持制御を実施するため「きずな」の小型アンテナを東京海洋大学の動揺安定台(船の揺れを吸収し、アンテナの向きを一定に保つ。図3参照)に載せて実験を行いました。

また、船舶が航行している場合、船から見た衛星の方向が時々刻々と変化していきます。そのため、動揺安定台に船の位置情報からアンテナの向きを補正する機能を加えました。これにより航行中の船舶からの安定した通信を実現することができました。

4. 今後の発展

近年海上でのブロードバンド通信のニーズが高まっていますが、既存の商用衛星によるサービスは最高でも3Mbps程度となっています。

本実験により実証された「きずな」による海上からの高速通信技術により、海洋調査や海洋観測機器の遠隔操作などの海洋研究の発展、商船などへのブロードバンドインターネット回線の提供など、海上での通信環境の大幅な改善が期待されます。

【図1:実験海域 相模湾】
【図1:実験海域 相模湾】
【図2:通信実験構成】
【図2:通信実験構成】
【図3:「きずな」小型アンテナと動揺安定台】
【図3:「きずな」小型アンテナと動揺安定台】
【図4:深海自律型無人探査機「MR-X1」】
【図4:深海自律型無人探査機「MR-X1」】
MR-X1が撮影した海底の様子
船上風景
【図5:伝送されたハイビジョン映像(左:MR-X1が撮影した海底の様子 右:船上風景)】

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