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2012年 3月27日
独立行政法人海洋研究開発機構

有人潜水調査船「しんかい6500」の改造について

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、操縦・運動性能の向上のため、所有する有人潜水調査船「しんかい6500」の改造を完了しましたのでお知らせします。

本改造は、平成20年度より実施しているテレビカメラのハイビジョン化等調査観測機能の向上に続くもので、昨年11月から新しい推進操縦装置等の改造工事を進めました。この改造工事では、後部の主推進器を従来の旋回式大型1台から固定式中型2台に、また水平方向の推進器を後部に1台増設し、従来4台であった推進器を6台とすることで回頭性能の向上を図ると共に、ジョイスティックによる6台の推進器の複合操作が可能となり、360°あらゆる方向への移動が可能となりました。また、全ての推進器の電動機を従来よりもレスポンスに優れた物に換装し、加速・制動性能も向上しました。これらの操縦・運動性能の向上により、地形が複雑な熱水噴出域や垂直に切り立った崖での試料採取、また海底において各種計測機器を正確に設置する等、建造後20数年を経過した有人潜水調査船「しんかい6500」は、海底における調査観測機能の向上のみならず、今までは不可能であったより高度な調査観測が可能となるものと期待されます。

陸上での工事は、平成24年3月5日に完了、その後、平成24年3月6日より開始した試験航海において、最大潜航深度(深度6,500m)での「しんかい6500」システム全般の作動試験を伊豆小笠原海溝で終え、3月22日に本改造工事を完了致しました。

今後、4月中旬までの期間、実海域での機能確認・調整及び乗員の慣熟訓練を実施、4月下旬より調査潜航の予定となっております。

当機構では、長年の間に培った運用経験とこれらの改造工事を通じて、有人潜水調査船に関わる研究開発と運用技術の向上を積極的に進め、有人潜水調査船の開発・運用のパイオニアとして、関連技術を含めた総合的な技術開発の向上とその継承に引き続き努めてまいります。


改造前後の比較
(左が改造前、右が改造後)

改造前

改造後


(後部に水平スラスタを1台追加(矢印))


改造前

改造後

後方
(主推進器を旋回式大型1台から固定式中型2台に変更(矢印))

本改造の新旧対照表
項目 備考
船体主要目 全長 9.5m9.7mサンプルバスケット先端から
全幅 2.8m2.8m固縛用アイを含む
高さ 4.3m4.1m垂直尾翼頂部まで
空中重量 26.7t26.7t  
水中最大速力 2.5ノット2.7ノット  
主推進器 後部1台 後部両舷2台 旋回式大型1台を
固定式中型2台に変更
電動機換装
水平スラスタ 前部1台前部1台
後部1台
後部水平スラスタを新規増設
併せて前部の電動機換装
垂直スラスタ 両舷2台両舷2台電動機換装
電動機方式 誘導電動機DCブラシレス
電動機
推進装置系だけでなく、海水ポンプ、油圧ポンプ電動機も換装
操縦制御方式 各スラスタを
個別に操作
複数のスラスタの
同時操作が可能
ジョイスティックにより
あらゆる方位への操船が可能
自動操船機能 船首方位保持船首方位保持
深度保持
従来の船首方位保持に加え、
深度保持機能を追加
その場回頭に要する時間 約4分約2分旋回半径約20mであったが、
船体中心を基準に回頭可能
横移動 スラスタ起動に約6秒かかる
真横へは進めない
速度制御が困難
スラスタ起動準備が不要
真横に移動可能
速度・方向を容易に制御可能
従来は主推進器と前部水平スラスタを手動で調節していたため熟練を要した
停止から巡航速度までの
所要時間(0⇒2ノット)
1分40秒1分15秒試験実測値
加速能力は1.3倍
巡航速度から停止までの
所要時間(2ノット⇒0)
1分55秒53秒試験実測値
制動能力はほぼ倍

お問い合わせ先:

独立行政法人海洋研究開発機構
(本内容について)
海洋工学センター 運航管理部 探査機運用グループ 月岡 哲 TEL:046-867-9377
(報道担当)
経営企画室 報道室 奥津 光 電話:046-867-9198