知ろう!記者に発表した最新研究

2009年5月29日発表
世界初!
日本列島の下にしずみこんだプレートのさけ目を発見!

地球の表面はプレートと呼ばれる何枚ものかたい岩の板におおわれています。これらのプレートの境目では、片方のプレートがもう一方のプレートの下にしずみこんでいることがあります。このしずみこんだ部分のプレートはスラブと呼ばれます。

今回、日本列島の下にしずみこんでいるスラブが、地下300kmから700kmにかけて二手ふたてにさけていることが明らかになりました。スラブが地下深くでタテにさけて左右に分かれているのは世界初の発見です。この発見によって、プレートの動きと性質の理解が大きく進みました。

プレートってなに? 地球の表面をおおう板状のかたい岩の板です

図1:日本列島の周りの大陸プレートと海洋プレート

プレートは2種類に分けられ、人々の住む大陸プレートと海の下の海洋プレートとがあります。日本列島の周りでも、大陸プレートと海洋プレートが見られます(図1)。これらの厚さは数十kmから数百kmにわたります。


何のためにプレートの動きを調べているの? 地球のダイナミックな物質の循環のしくみを解き明かすためです

循環とは物が形を変えながらめぐりゆくことです。プレートは1年に数cmずつ移動しています。そしてこの移動が、地球の物質を表面と内部で循環させるカギをにぎっています。

これまでの研究から、日本列島の東側にある海洋プレートの循環については次のことがわかっていました。

(1)まず、海洋プレートはアメリカ大陸の近くの海の底、東太平洋中央海嶺かいれいというところで作られます(図2)。


図2:東太平洋中央海嶺から移動し、日本列島の近くの海溝でしずみこむプレート

(2)そして長い時間をかけて日本列島まで移動すると、マントルへしずみこみます。この場所はみぞになっているので、海溝かいこうと呼ばれます(図3)。


図3:日本列島の東側にある海溝

(3)しずみこんだプレートはスラブとなってマントルをななめに進みます。

(4)深さ600kmくらいに来ると、水平にねます。

ところがこれまでの研究では、(3)より後、つまりしずみこんだスラブは、高温のマントルの中でどんな形や性質に変わるのかはなぞが多いままでした。そこで研究者は、スラブの動きに注目しました。

今回はどんな研究をしたの? 海溝から日本列島の下にむかってしずみこんでいるスラブをくわしく調べました。<br />
結果、スラブのさけ目を見つけました!

研究者は、地震波じしんはトモグラフィーという手法を使ってしずみこんだプレートの状態を調べました。結果、くの字に曲がっている海溝にそって海洋プレートもくの字になってマントルへしずみ、日本列島の下で二手にさけていることがわかりました(図4)。さけ目は、なんと深さ300qから700qにわたっていました。また、さけ目は現在もゆっくりと進みつつあります。


図4:日本列島の地下で二手にさけているスラブ

これらの発見から、スラブは高い温度のマントルにしずみこんだ後も、地表のプレートと同じでかたくバキンとわれたりさけたりする性質が明らかになりました。

これからはどうするの? 研究を続け、スラブの動きと性質をさらにくわしく明らかにしていきます

プレートを始めスラブの動きをくわしく知ることは、地球の物質の循環のしくみを知る上で欠かせません。一連の流れがわかれば、地球がどのような歴史をたどってきたのかを知る手がかりになるでしょう。今後プレートがどんな動きをするのかの予測にもつながります。研究者は今後もさらにくわしく研究を続け、スラブを通して地球のなぞにせまります。

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