知ろう!記者に発表した最新研究

2010年1月14日発表
東南海地震とうなんかいじしん津波つなみ監視かんしするシステム・DONETドゥーネット
海底工事がいよいよスタート!


図1:紀伊半島沖熊野灘で起こる東南海地震

日本は世界有数の地震多発国じしんたはつこく。これまで何度も巨大地震きょだいじしんによる被害ひがいを受けてきました。その巨大地震の1つに、東南海地震があります。震源しんげん紀伊半島沖熊野灘きいはんとうおきくまのなだ解説1)の海底(図1)。ここでは100〜150年おきにくり返し東南海地震が起きていて、今後30年以内にも60〜70%の確率かくりつで、これまでよりもっと大きな地震が起きると予測されています。さらに、この東南海地震は津波つなみも引き起こすかもしれません。

その東南海地震と津波にそなえて、海底から地震・津波の様子を調べる取り組みが進められています。その名も「地震・津波観測監視かんそくかんしシステム(DONETドゥーネット解説2) )」(解説3)。観測装置かんそくそうち震源しんげんのあたりに設置せっちして、それらを海底ケーブルでつなぎ、陸上局を通して各地に観測データをとどけるシステムです。2010年1月、いよいよこのシステムを実際じっさい紀伊半島沖熊野灘きいはんとうおきくまのなだの海底に作る工事が始まります。完成予定は2011年3月。完成後は、東南海地震・津波情報をまさにその発生場所でキャッチできるようになります。これを生かして地震・津波が陸におしよせる前に警報けいほうを出せば、被害ひがい大幅おおはばらせるでしょう。

地震・津波観測監視システム(DONET)ってなに? 東南海地震による被害を減らすことを目的として、地震・津波をリアルタイムで監視するシステムです

※リアルタイムとは(解説4



観測装置の中には、海底の様子をくわしく調べる地震計と水圧計(津波計)が入っています。これらを海底の20ヶ所に広く設置して、海底ケーブルでつなぎます(図2)。


このケーブルを伝って観測データを陸上局へ送り、そこからジャムステック、防災科学技術研究所ぼうさいかがくぎじゅつけんきゅうしょ気象庁きしょうちょう、大学などにとどけます(図3)。



図3:DONETのしくみ

DONETの強みは、精度せいどの高い観測装置を使って海底を広くリアルタイムで監視できる点。いち早く震源の位置と地震の大きさを明らかにできます。こんなすぐれたシステムは世界でも他にありません。

今回は何をするの?? いよいよ、DONETを海底に作り始めます

写真:観測装置を海底にうめこむ水中ロボット(テスト中)

これまでは、開発した観測装置が水中でも正確せいかくに動くかプールで確認かくにんしたり、水中ロボットで実際に海底に設置する練習やテストなどを行ってきました(写真)。



図4:DONETの場所

これからは、いよいよDONETを海底に作ります(図4)。

まずは海底ケーブルの工事です。この海底ケーブルは観測装置と陸上局をつないで、観測データや電気を通す重要なライン。専用せんようの船(海底ケーブル敷設船ふせつせん)を使って三重県みえけん尾鷲市おわせし古江町ふるえちょうの陸上局から海底、そして沖へしき進めます。



図5:観測装置をとりあつかう水中ロボット

そして次に、水中ロボットを使って1年かけて観測装置を1つずつ海底ケーブルにつなげていきます(図5)。

2010年4月からは、海底に設置された観測装置から次々と観測データが送られてくる予定です。


DONETが完成すると、どんなふうに役立つの? 東南海地震の警報をより素早く正確に出すことができます

東南海地震が起きた時にDONETのリアルタイムの観測データを調べれば、震源や地震・津波の大きさなどがすぐにわかります。早く警報を出せるので、人々がにげる時間をかせぐことができるでしょう(図6)。


図6:警報を早く発信!

また、長年監視を続けてその観測データをコンピュータで解析・シミュレーションすれば、次の地震の時期や発生パターンを予測できるかもしれません。そうなれば、地震がきてもたおれない建物を設計したり、こわれない道路の材料を作ったりするなど、より具体的に地震対策たいさくをたてることができるでしょう。

人々のより安全なくらしを目指して、今日もDONETの工事は続けられます。

プレスリリース後の様子

海底ケーブル敷設船が、海底ケーブルをしいてます!

あれれ?どうやって海底ケーブルをしくの? 最初は海底ケーブルをバルーンブイにつないだ状態にして船で引きます。設置したい場所に着いたら、バルーンブイから切りはなして海底に設置します。
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解説が入る

解説1:

東海から四国の南の海底に広がる南海トラフという場所の一部にあたります。

解説2:

Dense Oceanfloor Network System for Earthquakes and Tunamisのりゃくです。

解説3:

DONETは、ジャムステックが文部科学省から引き受けた取り組みです。

解説4:

ここでは、「観測装置が観測をすると同時に、その観測データを陸上局に送る」というイメージです。