気候変動予測とアフリカ南部における応用

flash エルニーニョ現象 インド洋ダイポール 亜熱帯ダイポール 農業への応用

アプリケーションラボでは、インド洋ダイポールモードやエルニーニョの予測研究で世界をリードしてきた研究成果を、日本のみならず、気候変動リスクに対して脆弱な環境にある世界のさまざまな地域の行政や産業活動、たとえば農業、水管理などに、実際に応用、利用するための研究開発を行っています。  気候変動予測を実社会に具体的に応用することは、過去にIPCCレポートなどの策定を決定したことで知られる世界気候会議の第三回会議(2009年8月ジュネーブにて開催)において決議声明として採択され、世界的に大変重要な注目を集めるテーマとなっています。この世界的展開は、アプリケーションラボの目的と軌を一にするものです。 また一方で、環境・エネルギー・防災などの気候予測情報が必要とされる課題は、一つの国や地域だけで解決することは難しく、国際社会が共同で取り組むことが求められています。 JST-JICA地球規模課題対応国際科学技術協力プログラムは、 “開発途上国のニーズを基に、地球規模課題を対象とし、将来的な社会実装の構想を有する国際共同研究を政府開発援助(ODA)と連携して推進し、地球規模課題の解決および科学技術水準の向上につながる新たな知見を獲得こと” を目的としています(http://www.jst.go.jp/global/index.htmlより抜粋)。

その研究課題のひとつとして、アプリケーションラボが提案した「気候変動予測とアフリカ南部における応用」が採択されました。 このプロジェクトは、南アフリカに焦点を当て、その特徴的な気候変動の予測や予測を担うモデルの研究開発、さらに局所的な、たとえばケープタウン域やリンポポ域などの地域密着型の気象・気候変動予測モデルの研究開発、地球シミュレータを使用した先端的モデルの研究開発を、現地の研究者とともに連携して推進するものです。また、現地における農業試験所等との連携により、詳細な観測データを入手し、それらを予測モデルの初期値として、あるいは検証データとして用いることにより、予測精度の向上を目指します。気候変動予測の成果は、携帯電話やインターネットにより地域の住民、農業関係者などに広く発信する予定です。プレトリア大学、ケープタウン大学との連携も予定されています。学術的な共同研究に加えて、学生向けのレクチャーや研究者の相互派遣を計画しており、人材育成支援に関しても積極的な展開を予定しています。

アフリカ南部は、自然に強く依存した生産形態をとっており、気候変動リスクに対し極めて脆弱です。本研究では、アフリカ南部の気候に影響する亜熱帯ダイポールモード現象などの気候変動現象の発生と長期変動メカニズムを明らかにし、アフリカ南部社会の持続的成長に貢献することを目指します。具体的には、気候変動現象とその影響を正確に表現できる高精度の大気海洋結合モデルを用いてアンサンブル予測実験を行い、数ヵ月から数年先の気候の自然変動を予測します。そして、この予測結果を領域モデルに取り入れて、局所的な気象現象の予測研究の推進とともに、アフリカ南部に実用的な早期予測システムを構築します。さらに、予測実験結果の解析により、気候変動現象の予測の可能性を調べるとともに、予測結果の検証作業を通して、気候モデルに用いられる雲や降水過程のパラメタリゼーションの高精度化を行います。

研究の概要