2024.11.28
Deep Biosphere あるいは Deep Life 、いわゆる「地下生命圏」には、何が棲息していて、どこまで広がり、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。
1970年後半には、潜水調査船アルビン号によるガラパゴス沖の海底熱水系と周辺に広がる特異な生態系が初めて報告されました(Lonsdale, 1977; Corliss et al., 1979)。同じ頃、日本周辺でも深海底の生態系調査が行われるようになり、化学合成生物群集のホットスポットが報告されました(e.g., Okutani and Egawa, 1985)。1990年代に入り、海底下に広大な「地下生命圏」が存在していることが提唱され(Gold, 1992)、地下圏の炭素循環(Deep Carbon)の理解と併せ、生命科学的かつ物質科学的な解析が広まりました。 一方、陸上では、地殻内の岩石・水文学的調査とともに「地下生命圏」の研究も進みました。分子生物学の本格的な参入が加わり、海底下の試料に応用されるようになりました(e.g., Parkes et al., 2000)。以降、「Deep Biosphere」という言葉が徐々に浸透し、更に新しい分析手法の技術開発も進みました。
原核生物のうち、アーキア(古細菌)の多様性は、当初の2つの門(クレンアーキオータ門、ユーリアーキオータ門)から、今や約30を超える門(phyla)に拡大し、その数(species)は2万種を超えています。アーキアは、進化系統的にも多様な微生物群であることが認識され、地球上のあらゆる環境に存在し、バクテリア(真正細菌)やユーカリア(真核生物)と共存しています。一方、アーキアは、培養された種類も比較的少なく、その知見はまさに日進月歩といえるでしょう。
地球深部における「Deep Biosphere」の根源的な問いに答えるための分野の一つが、地球生命科学であり、水圏および地下圏での炭素循環「Deep Carbon」を広く理解する領域が、地球物質科学と位置づけられます。