2024.11.25
極域(北極・南極)を含む高緯度域は、地球システム全体に影響を与えうる重要な要素があります。とくに、北極と南極は、地球の熱交換において重要な役割を持っています。極圏の氷は、太陽からの熱を反射し、地球の温度を安定化させるためです。また、水(H2O)は、熱容量が大きいことから、地球の温度の緩衝能としての役割もあります。
高緯度域は、地球の気候変動に敏感に応答します。例えば、10万年以上の時間スケールでは、氷期―間氷期サイクルに伴う氷床の後退や地史的な変遷、それに伴う生物相の応答が挙げられます。極域の大陸氷床は、水のリザーバーとしての役割も重要です。氷河や氷床の減少が進むと、海面上昇が加速し、海洋の物理的条件が変化する可能性があり、海洋を含む地球システムの連鎖的なフィードバックが予想されることから、変位を正確に観察していく必要があります。
より短い時間スケールでは、『人新世(Anthropocene)』というキーワードに代表されるように、人為的なインパクトに伴う地球規模の温暖化と氷床減少のほか、高緯度域を含む広域な生態系への定性的・定量的な応答に注目が集まっています。