研究テーマ
  • 地球深部探査船 ちきゅう
  • JTRACKの研究目的

JFASTで分かったこと

2012年に実施したIODP Exp.343 JFASTの調査では、2011年 東北地方太平洋沖地震を引き起こしたプレート境界断層の一部からコア試料を採取することに成功し、分析の結果、断層部分はすべりやすく、含んだ水分を逃しにくい粘土鉱物(スメクタイト)を多く含むことが分かりました。
また、地震発生時に地層内の応力がどのように変化したかを調べるため、地層の物性データを分析した結果、地震前に蓄積されていた応力が地震発生時にほぼ全て解放されたことが分かりました。この大規模なプレート境界断層のすべりにより、津波が巨大化したと考えられています。
更に、地層内の温度を計測することで地震発生時の断層のすべりによって生じた摩擦熱を捉えることができました。
計測の結果から、地震により生じた断層のすべりが浅い部分まで伝わり、またこの摩擦熱によって断層内の粘土に含まれる水分が膨張したために大きなすべりを引き起こしたことがわかりました。

JTRACKで目指すこと

さまざまな研究成果が得られたJFAST。しかし、未だ3つの問いが残されています。
(1)地震発生から10年以上が経過した現在の断層周辺の応力の蓄積状態はどうなっているのか?
(2)地震を引き起こした断層の構造、物性的特徴はどのようなものか?すべりの挙動をコントロールする要素は何か?
(3)地層内の流体は断層周辺の応力状態にどのように影響するのか?
2024年、IODP Exp.405 JTRACKではJFAST調査域に再訪し、コア試料の採取、掘削同時検層、長期孔内温度計測システムの設置を行い、これらの問いを明らかにすることを目指します。

IODP Exp. 405 JTRACK 研究航海の概要

■Mission1

両サイトで掘削同時検層を行い、コア試料の分析データと合わせて応力状態の時間変化を明らかにする

■Mission2

JFAST掘削地点(断層帯周辺)で連続的にコア試料を採取し、断層帯の構造の全貌を明らかにする

■Mission3

インプットサイト(沈み込む前のプレート側)からのコア試料を採取し、前縁プリズムやプレート境界断層の物質の情報を得る

■Mission4

JFAST掘削地点に長期孔内温度計測装置を設置し、断層帯周辺のより詳細な水理構造を明らかにする