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国際深海科学掘削計画(IODP)

科学テーマ

国際深海科学掘削計画(IODP)の開始(2013年10月)に先駆けて、新しい科学計画書「Illuminating Earth's Past, Present, and Future(日本語表題:地球の過去、現在、未来の解明)が2011年6月に策定・公開されました。これは、IODPに参加する世界中の科学者からのアイデアを集めたもので、科学者はこれに沿った形で科学掘削提案書(プロポーザル)を作成します。

IODPの科学計画書「Illuminating Earth's Past, Present, and Future(日本語表題:地球の過去、現在、未来の解明)」には、深海掘削によって解明を目指す4つの科学テーマと14の科学的チャレンジが掲載されています。
科学計画書はこちらよりダウンロード可能です

「Illuminating Earth's Past, Present, and Future」の概要

テーマ1. 気候・海洋変動 ~過去を読み解き、未来へ知らせる~

気候、海洋、氷床が現在起こっている温室効果ガスの急速な増加に対してどう反応するかを予測するため、過去の環境と気候状態の記録を海洋底堆積物コアから読み取る。

チャレンジ1
二酸化炭素濃度上昇の地球気候システムへの影響の解明
現在よりも温暖な気候であった過去の地球の姿を明らかにすることで、地球システムにおける地球温暖化の原因、速度、影響を解明する。
チャレンジ2
気候温暖化の氷床と海水準への影響の解明
氷床と汎世界的海水準が過去の地球温暖化に対して反応する割合を明らかにすることで、数十年後にどれほど海水準の上昇があるかを洞察する。
チャレンジ3
地域的降水パターンの発生要因の把握
モンスーンやエル・ニーニョ現象などの大気・海洋循環の影響による、年次変化よりも長い時間スケールにおける気候変動の周期性を過去の堆積物記録から解明する。
チャレンジ4
海洋の化学的変動に対する海洋の回復力の理解
現在そして未来の海洋状態を予見するため、過去の温暖地球における海洋の酸性化および低酸素化に対する反応を明らかにする。

テーマ2. 生命圏フロンティア ~深部生命、生物多様性、生態系の環境影響力~

海底下生命圏の探査により、その生息環境や多様性、環境変化に伴う微小動物相の進化を明らかにし、人類を含む生命の起源に関する見識を提供する。

チャレンジ5
地下生命圏の起源、構成、グローバルな重要性の理解
我々の惑星の中で最も大きな生態系の一つであろう海底下深部生命圏の姿を明らかにすることで、海洋の化学、炭素循環、そして堆積物と岩石の変質に影響を与える地球化学プロセスを解明する。
チャレンジ6
海底下生命圏の限界の探求
今現在の地球における生命の限界に関する議論を解決するとともに、地球または太陽系内の他の場所で生命の起源を育んできたと考えられる条件やプロセスを解明する。
チャレンジ7
環境変動に対する生態系および生物多様性の感度の把握
化石を含む海底堆積物の解析を行い、過去の海洋、気候、そして生物多様性の変動やそれらの関連性を理解する。

テーマ3. 地球活動の関連性 ~地球深部の活動とその表層環境へのインパクト~

惑星進化の過程にある地球規模の変化の原理を理解するため、地球の核から大気にわたって影響を与える海洋堆積盆地の形成・消滅、大陸の移動、火山・地震の発生など、地球のダイナミックな活動を理解する。

チャレンジ8
上部マントルの組成、構造、ダイナミクスの解明
数十年来の深海科学掘削の目標である、海洋地殻完全採取、モホ面の性質の特定、そして新鮮なマントル試料の採取を通じ、地球の体積の約7割を占め、最も大きな化学貯蔵庫であるマントルの理解を深めることで、惑星地球の進化を解明する。
チャレンジ9
海洋地殻構造に対する、海洋底拡大とマントル融解の関係の把握
低速拡大海嶺に露出した深部地殻とマントルの掘削により、地殻構造の3次元モデルを検証する。
チャレンジ10
海洋地殻と海水の化学物質交換のメカニズム、規模、歴史の把握
熱水変質作用における海水と海洋地殻の地球化学的因果関係を明らかにするとともに、全地球における化学的収支と貯蔵への寄与を解明する。
チャレンジ11
沈み込み帯の開始、揮発性物質の循環、及び、大陸地殻の創造の総合的理解
世界で最も爆発的な火山の噴火、巨大地震、津波が起こる場所であるプレート収束域の掘削により、沈み込み帯の始まりや大陸地殻の生成における島弧火山活動の果たす役割の解明、および沈み込み帯で発生する地震・火山災害のリスクアセスメントを行う。

テーマ4. 変動する地球 ~人間活動の時間スケールにおけるプロセスと災害~

人間活動の時間スケールで起こる地震、地すべり、津波などの地球変動の頻度、メカニズム、影響を明らかにする。

チャレンジ12
巨大地震、地すべり、津波発生のメカニズムの解明
現代の地球科学が直面する最も緊急かつ挑戦的な任務として、長期リアルタイム観測システムを構築し、地震、海底地すべり、津波等の発生メカニズムの解明や減災に役立つデータの取得をめざす。
チャレンジ13
海底下の炭素流動および貯蔵を支配する特性およびプロセスの解明
気候、生物、固体地球、そして災害に関する研究の幅広い空間・時間スケールでの連携に資するため、海底下堆積物の堆積様式と変形、炭化水素の生成と蓄積、海底斜面の安定性、地殻による二酸化炭素の吸収、そして生物群集を明らかにするとともに、それらの相互関係を解明する。
チャレンジ14
海底下地質構造、熱、生物地球化学的プロセスと流体との関係の理解
地球最大の帯水層である海洋リソスフェアに存在する流体の循環・化学的挙動を理解することで、海水や物質循環の変遷、海底下生命圏との関連性を明らかにする。