2007年05月18日
独立行政法人海洋研究開発機構
海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、KDDI株式会社により東海沖(愛知県豊橋市南方沖)に敷設されていた長さ約50kmの海底ケーブルを用いて、新しい海底長期観測システムを構築し、本年5月12日より連続観測を開始しました。これにより、東海地震の発生が懸念されている海域において、地震・津波観測データをリアルタイムで配信することが可能となるほか、巨大地震の発生過程(特に地殻中の水の役割)の解明に貢献することが期待できます。
豊橋沖は東海地震の想定震源域のごく近傍にあたるため(図1)、海底ケーブルの先端に最新の地震計・津波計・電位磁力計(図2)などを接続することにより、東海沖での地震や津波、また地殻変動などに伴う海底での諸現象の変化を高精度かつリアルタイムに陸上へ転送することができます。また、本システムでは、海底ケーブルそのものを巨大な送信アンテナとして、人工電磁波による地殻の電気抵抗をモニタリングすることが可能となり(図3)、地震発生における地殻中の水の役割が明らかとなります。この機能は、世界で初めての試みです。
このような先進的な海底長期観測システムにより、陸上での観測網では分からなかった、海底下の地震発生帯の挙動が明らかになると期待されます。また、本観測システムは今後東南海地震震源域への展開を予定している「地震・津波観測監視システム」用に開発される海底観測装置の試験にも利用する予定です。
なお、本観測システム構築にあたっては、KDDI株式会社から無償で譲渡された、運用を停止した通信用光海底ケーブル2本を再利用しました。これにより、新規設置に比べて低コストでシステム開発を行うことができました。