2012年 7月 12日
独立行政法人海洋研究開発機構
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)は、統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)(※1)および日本学術振興会による最先端研究基盤事業「海底下実環境ラボの整備による地球科学-生命科学融合拠点の強化(「ちきゅう」を活用)」の一環として、7月26日から9月27日までの期間、運航する地球深部探査船「ちきゅう」を用いた「下北八戸沖石炭層生命圏掘削調査」(別紙参照)を実施しますので、お知らせします。
※統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)
日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際プロジェクト。現在、欧州、中国、韓国、豪州、インド、ニュージーランドの25ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。
別紙
下北八戸沖石炭層生命圏掘削調査
1.日程
なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。
2.日本から参加する研究者(9名)
氏名 | 所属/役職 | 乗船中の役割 |
---|---|---|
稲垣 史生 | 海洋研究開発機構/上席研究員 | 共同首席研究者 |
井尻 暁 | 海洋研究開発機構/研究員 | 有機地球化学 |
谷川 亘 | 海洋研究開発機構/研究員 | 物理特性 |
星野 辰彦 | 海洋研究開発機構/研究員 | 微生物学 |
堀 知行 | 産業技術総合研究所/研究員 | 微生物学 |
村山 雅史 | 高知大学/教授 | 堆積学 |
森田 澄人 | 産業技術総合研究所/研究員 | 物理特性 |
諸野 祐樹 | 海洋研究開発機構/主任研究員 | 微生物学 |
山田 泰広 | 京都大学/准教授 | 物理検層 |
3.航海の概要
本研究航海では、八戸沖約80kmの海底(水深約1,180m、図1)において、2006年の「ちきゅう」慣熟訓練航海期間中に試験掘削された海底下約650mまでの掘削孔を、ライザー掘削システムを用いて、さらに海底下約2,200mまで掘進し、地層のコア試料・流体試料(地層中に存在する地下水等)の採取を行うとともに、掘削孔内に検層装置を降下させ、地層の物性データの取得を行います。
なお、本調査は、平成23年3月に実施する計画でしたが、東北地方太平洋沖地震の影響により、延期されたものです。
4.研究の目的
メタンハイドレートや天然ガス等の大陸沿岸の海底下の炭素循環システムの理解は、我が国のエネルギー資源問題と直結した問題であるばかりでなく、過去の地球環境における温暖化イベントや生態系の変化を理解し、将来の持続的な低炭素社会を構築する上でも重要な科学的課題となっています。
同海域の事前調査により、下北八戸沖の海底堆積物には、海底下2,000m以深の石炭層に由来する天然ガス(メタン)が存在し、また、海底下約365mまでの比較的浅い地層中にメタンハイドレートが蓄積していることが明らかになっています。これら天然ガス、メタンハイドレートの生成には、地下微生物活動が関わっていると考えられており、本研究航海において得られたコア試料や地層の物性データを分析することにより、地下深部の生命活動の実態を解明し、海底下の炭素循環システムを理解することを目的としています。また、その研究成果を活用することで、海底下深部堆積物内への二酸化炭素隔離や地下微生物の活動による持続的な炭素循環システムの可能性に関する研究への発展が期待されます(図2参照)。
5.その他
海洋研究開発機構では、本研究航海に関する特設ウェブページを開設する予定です。(http://www.jamstec.go.jp/chikyu/exp337/)。このウェブページでは、航海概要や乗船研究者の紹介を行うとともに、航海中の船上からのレポートなどを随時更新する予定です。
図1.IODP第337次研究航海の掘削予定地点(八戸の沖合80km、水深1,180m)
図2.IODP第337次研究航海下北八戸沖石炭層生命圏掘削調査の科学目標の概略図