2012年 12月 13日
独立行政法人海洋研究開発機構
1.概要
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)は、海洋の極限環境に生息・発達する多様な生物群を調査し、それらの生物が有する様々な生命維持機能等、極限環境への適応機能を理解する事を通じて、生命の起源と進化のメカニズム、地球環境変動と生物の関わり合いや将来予測などの研究を推進しています。今般、その一環として、平成25年1月から有人潜水調査船「しんかい6500」及び支援母船「よこすか」を用いて、インド洋、大西洋(ブラジル沖、カリブ海)、太平洋(トンガ海溝、ケルマディック海溝)の高温熱水域、メタン湧水域、超深海域などの特異かつ極限的な海洋環境域に成立する生態系について、地球的規模の調査・研究を実施するため、15年ぶりに約1年間かけて研究航海「航海名称:QUELLE(クヴェレ)2013」を行います。
この研究航海は、地理的・科学的にも広範囲かつ多岐にわたりますが、特に、生命の生存限界に近い、海洋の極限環境域における生態系を総合的に調査することで、DNAを遺伝子としてもつ地球型生命の生存限界と多様な適応戦略についての解明が目的です。また、今回の調査は、潜航に基づく本格的な科学調査がほとんど行われてこなかった海域を対象に、海域に関わる関係諸国の了解の下、共同研究として実施されます(航路図概要は図1参照)。
本研究航海を通じて、海洋の極限環境における生命の生存限界の理解と極限環境への適応戦略の解明が進むことにより、生命の根源に迫る重要な知見が得られるとともに、極限環境に適応する生物の機能解明と応用等の関連分野の研究の発展に寄与することが期待されます。また、20年以上にわたり運用し、多くの成果をもたらしている「しんかい6500」を用いることにより、日本の科学・技術力を世界に示し、世界の深海研究開発を牽引するものです。
2.調査海域及び実施内容
(1)中央インド洋海嶺・ロドリゲス三重点周辺部
1)海域の特徴
2)調査概要
3)モーリシャスの研究機関との共同研究
4)期待される成果
(2)ブラジル沖
1)海域の特徴
2)調査概要
3)ブラジルの研究機関との共同研究
4)期待される成果
(3)カリブ海 英領ケイマン諸島周辺
1)海域の特徴
2)調査概要
3)英米の研究機関との共同研究
4)期待される成果
(4)トンガ海溝、ケルマディック海溝
1)海域の特徴
2)調査概要
3)ニュージーランド、デンマークの研究機関との共同研究
4)期待される成果
3.航海日程(予定)
平成25年 | 1月5日 | 海洋研究開発機構横須賀本部岸壁 出港 |
1月〜3月 | インド洋海嶺 調査 | |
4月〜5月 | ブラジル沖 調査 | |
6月〜8月 | カリブ海 調査 | |
8月〜9月 | 「しんかい6500」電池交換のため、一時帰国 | |
10月〜11月 | トンガ海溝・ケルマディック海溝 調査 | |
12月 | 海洋研究開発機構横須賀本部岸壁 帰港 |
4.本航海の名称について
「QUELLE(クヴェレ)2013」
Quelle(クヴェレ)とはドイツ語で「起源」、「源泉」という意味。
生命の起源の探るという航海の共通タイトルの、
Quest for Limit of Life, 2013 の赤文字の部分を採用
※1 スケーリーフット巻貝
鱗をもった珍しい深海の巻貝で白色と黒色のタイプに別けられる。黒色のスケーリーフットは体表が硫化鉄で覆われているため、金属光沢を放つ。