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深海インスパイアード化学から生まれた“圧力でものづくり” ―汎用プラスチックを低温で成形―

2025.11.11

生命理工学センターの出口センター長は、京都工芸繊維大学、京都大学との共同研究により、熱ではなく“圧力”を使ってプラスチックをより低温で成形できる方法を実証しました。深海の極限環境に学ぶ「深海インスパイアード化学」の発想から、汎用プラスチックに低温でやわらかくなる性質を与えることに成功しました。プラスチックの省エネ成形・劣化抑制・リサイクル性向上につながることが期待されます。本成果は、アメリカ化学会が刊行する学術誌 ACS Macro Letters に掲載されました。

発表のポイント

  • 何をした?
    特殊な高分子(バロプラスチック)を混ぜることで、ポリL-乳酸など汎用プラスチックが低温で流れやすくなりました。
  • なぜ大事?
    低温成形により、エネルギー使用とCO2排出を削減でき、熱劣化を抑えてリサイクル時の品質低下を防止できます。
  • どんな新規性?
    「圧力可塑化(baroplasticization)」という新しい考え方を提案し、一般的なプラスチックにも適用できる設計指針を示しました。

深海熱水噴出孔の高温・高圧環境に発想を得た「深海インスパイアード化学」に基づく技術は、製造装置や食品分野で事業化されており、現在は機能性材料分野化粧品での実用化研究が進められています。これらの取り組みは学術的・社会的に高く評価され、井上春成賞および高分子学会三菱ケミカル賞を受賞しています。今回の研究は、深海の極限環境を特徴づける「圧力」に着目した「深海インスパイアード化学」のアプローチが、サステナブル素材開発において極めて有用であることを新たに示しました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST 研究領域「分解・劣化・安定化の精密材料科学」(研究総括:高原 淳(九州大学))における研究課題「バロポリエステル:圧力による精密分解制御」(研究代表者:出口 茂)(課題番号JPMJCR21L4)の支援を受けて実施しました。

詳しくはこちら:
https://www.kit.ac.jp