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小平秀一部門長と野崎達生グループリーダー代理が令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞

2023年4月11日

海域地震火山部門の小平秀一部門長と、海洋機能利用部門 海底資源センターの野崎達生グループリーダー代理が、令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞しました。

この賞は、文部科学大臣が、科学技術に携わる者の意欲向上を図り、我が国の科学技術の水準の向上に寄与することを目的として授与しています。研究部門での受賞は、我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究または開発を行った者を対象としています。

受賞者:
小平秀一 部門長(海域地震火山部門)
受賞業績:
大規模海底下探査によるプレート境界の実態解明に関する研究
 
近年の地震観測網の発展により、地震時の断層すべりは空間的に一様ではないことが示されてきた。しかしながら、その不均質分布の実態像は明らかにされず、定量的モデル化が困難であった。本研究では、深海調査技術を活用して観測機器の大規模・大量展開化、超深海化により大規模海底下構造探査手法を確立・改良し、海溝型地震のすべり挙動を規定する構造要因の定量的可視化に成功し、その実態を明らかにする道を拓いた。その結果、南海トラフでは、沈み込んだ海山・海嶺や大規模な貫入岩帯が可視化され、それら構造が不均質な断層すべり分布を制御していることを明らかにした。また、東北沖地震震源域では50mを超える断層すべりがプレート沈み込み口まで達していることの可視化に初めて成功した。この発見は、従来の巨大地震震源断層に関する概念モデルを覆すものであった。本成果は、プレート境界断層の実態を明らかにするとともに、現実的なプレート境界モデルに基づく地殻活動の現状評価と推移予測の基盤的な情報として活用が期待される。

主要論文
Kodaira, S. et al. (2004). Science, 304(5675), 1295-1298.
Kodaira, S. et al. (2012). Nature Geoscience, 5(9), 646-650.
Kodaira, S. et al. (2020). Annual Review of Earth and Planetary
Sciences, 48, 321-343.

受賞者:
野崎達生グループリーダー代理(海洋機能利用部門 海底資源センター)
受賞業績:
地質時代を通した宇宙物質流入と地球生命史に関する研究
 
本研究では、日本の遠洋性深海底堆積岩である「層状チャート」がもつ「堆積速度が非常に遅く、陸源性の砕屑物の混入がほとんどない」という堆積環境に着目し、この堆積岩から宇宙物質の混入を効果的に検出する手法を構築しました。そしてこれらの技術を用いて、過去3億年間の深海底堆積岩(堆積物)を研究した結果、新発見となる小惑星衝突イベントを3件(2億1500万年前、2億600万年前、1160万年前)、宇宙塵の大量流入イベントを2件(2億5200万年前、2億4200万年前)見出しました。本研究で明らかにした宇宙物質流入イベントの時代には、突発的な化石の絶滅や進化が記録されており、宇宙物質流入量の変動は、気温や大気組成の変動と同じく、地球生命史において重要な役割を持つことが示されています。今後、同様の研究を他の異なる地質時代に適用することで、地質学的イベントの原因究明やさらなる理解につながることが期待されます。

主要論文
Nozaki T. et al. (2012) Geostand Geoanal Res 36, 131-148.
Sato H., Onoue T., Nozaki T. et al. (2013) Nat Commun 4, 2455.
Nozaki T. et al. (2019) Sci Rep 9, 16111.


小平秀一部門長


野崎達生グループリーダー代理