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ULTRA-DEEP SEA SAMPLE RETURN

超深海サンプルリターン2025

2025年、JAMSTECは超深海からのサンプルリターンに挑みます。
水深5,000m以上の日本海溝からスタートし、ハイライトを飾るのは水深10,000mをこえる「地球で一番深い海」、マリアナ海溝。
まだ誰も手にしたことのない「世界最深」サンプルリターンの瞬間を2026年正月に研究船からライブ中継。
超深海からのサンプルリターンに挑むJAMSTECと「本物」を手にする感動を共有しよう!

研究者からのメッセージ

1億2千450万人の日本国民のみなさま、2025年、急遽「JAMSTECサンプルリターン特命大臣」にセルフ就任したケン・タッカイです。「...誰?」という声なき声が聞こえてきましたが、実は2013年6月22日に世界初の「しんかい6500による科学潜航調査ニコニコナマ中継」を主導した「深海アトランティス連邦大統領首席補佐官」こと「ケン・タッカイ」(https://www.jamstec.go.jp/6k_live/)と同一人物なのです。

アレ以来...

某国立研究開発法人の管理職の激務やギチギチにチューンアップされた研究インコ(インテグリティ・コンプライアンス)意識養成ギブスのせいであまり登場頻度が多くないワタクシですが、何やら昨今、深海アトランティス連邦の一つである「JAMSTEC」の深海探査技術や能力に対して、そろそろ「お肌の曲がり角」にさしかかっているのではないか?という噂を耳にすることが多くなってきました。いやいや「お肌の曲がり角」どころか、JAMSTEC広報課職員であり、このWebページ編集責任者でもある「小野小町」に似てなくもない(かもしれない)「広報課員A」さんなぞは

花の色は
移りにけりな
いたづらに
我が技世にふる
ながめせしまに

(現代訳:あれだけ綺麗に咲き誇っていた桜の花はむなしく色あせてしまったわ。昔の栄華にあぐらをかいているうちに、我が国の深海探査技術もまた、同じように色あせてしまったのかしら...)

という和歌を読みはじめる始末。

うん、まあ、確かに、そういうこともなきにしもあらずかもしれませんね。2025年現在、深海潜水調査船支援母船「よこすか」は35歳、有人潜水船「しんかい6500」は36歳です。「船齢30歳=第一線引退論」が流布する船舶業界において、その年月を重ねた外観や人目につかないけど老朽化・陳腐化したスペック、あるいは製造中止になった一部の部品、等々を思い起こせば、「よこすか」や「しんかい6500」が「我が身世にふるながめせしまに」と嘆いたとしても誰が責めることできましょうか、いや誰もできないでしょう(反語)。

いくらデビュー当時世界最強の潜在能力だったとしても、年月を重ねれば当然身体的(機械的)な不具合が増加していくのは間違いのない事実で、アスリートとしての成長(研究プラットフォームとしての能力向上)に頭打ちがくるのも仕方がありません。加えてガタイも活きもいい若手(中国?)の台頭があれば、ファン(国民)もベテラン選手(JAMSTEC)が輝きを失っているように見えるかもしれません。

しかーし。だがしかし。

思い出すがよい、諸君!

2008年の阪神タイガースは、40歳のベテラン金本知憲をチームの大黒柱の4番に据えて(「Vやねん!」優勝未遂大失速事件を起こすまでは)セ界を席巻していたことを。その年の金本知憲は144試合フルイニ出場、打率307、本塁打27、打点108という堂々たる成績で(大失速するまで)チームの優勝争いに大きく貢献したのだ。40歳以降、「あのお肩」と揶揄されるかなり苦しい時期もあったにもかかわらず、重ねた本塁打は82本、不滅の世界記録=1492連続試合フルイニング出場、も達成した金本知憲の40歳台選手時代を「年月とともに輝きを失った」と簡単に片付けるプロ野球ファンなどいないのです。何よりも、引退後も監督として、選手時代以上の情熱と意志と蔑称を携えて「超変革」を実行し、生え抜き看板選手が主力となった今の輝ける阪神タイガースの土台と文化を作り上げたヤニキの功績に感謝していない阪神ファンなどいないのです!

ハアハア。日本国民のみなさま、阪神タイガースネタを書き始めるとついつい熱が入ってしまい、よくわからない激しいアジテーションしてしまったワタクシをお許しください。

お許しついででもう一人、「年月を重ねるにつれますます輝いた」プロ野球選手を紹介したいです。金本知憲よりもっと(成績的にも人間的にも)超先鋭だったレジェンド=故・門田博光。「門田は若い時から(能力も態度も)ヤベー選手だった」と故・野村克也も著書で語っていますが、むしろ40歳を過ぎてからの門田の能力全開ぶりは「変態」としか言いようがありません。40歳以降、164本もの本塁打をフルスイングで叩き込みました。もし42歳シーズン時のブーマーとのハイタッチ肩脱臼事件がなかったら、40歳台で重ねた本塁打の数は200本に到達していたかもしれないと思わせるほどの円熟フルスイングの凄み。それが晩年の門田博光でした。

「そら(円熟フルスイングの凄みが)、そうよ(今のJAMSTECの深海探査を表現するのにピッタリの言葉よ)」(どんでん)

まさにワタクシが言いたかったのはソレなのです。今のJAMSTECの深海探査システムの実態は全盛期を過ぎて輝きを失っているどころか、むしろ重ねた年月と試行錯誤と経験によって研ぎ澄まされ、フルスイングの輝きや凄みを増していると言って良いでしょう。すばりそうでしょう。

まあかなりの身内贔屓はあるかもしれません(笑)。とはいえワタクシが強調したいのは、年月を重ねた円熟ぶりを自慢したいわけではなくて、むしろ逆なのです。金本知憲や門田博光がそうであったように、円熟の輝きはいつまでも続くわけではありません。線香花火が一番大きく輝いたのち火球を落として消えるように、突然(それは実際のところ明日かもしれないです)それが失われることもあるのです。つまり、「よこすか」も「しんかい6500」も何か致命的な故障が起これば、あっけなくその円熟に達した現役生活に終止符を打たねばならなくなる時が来ることもあるのです。

さらにもう一つ、大事なことを言わせてください。金本知憲や門田博光、あるいは山本昌や森高千里、が「衰えるどころかますます凄みと魅力を増す」尋常ならざる存在であったとしても、その進化の最終形態がイチローや大谷翔平になることは絶対にありません。全く新しい概念やスタイルの野球選手が尋常ならざる存在を軽やかに超えて出現し、バトンを受け継いでその歴史を革新しつつ新たな時代を作り出すこと。それがプロ野球の超変革であり進化であり、ファンを惹きつける最大の魅力なのです。

だとすると、今まさに、「よこすか」も「しんかい6500」も飛び越えて、イチローや大谷翔平のような全く新しい概念やスタイルの深海探査の船やシステムが出現しなければならない時なのではないか?ワタクシはそう言いたいのです。

渇望せよ、諸君。「よこすか」や「しんかい6500」を刷新する深海探査の船や技術を!

訴求せよ、JAMSTEC。「よこすか」や「しんかい6500」を刷新するための世論や金脈を!

「あら、出たわね(ホンネが)」(ヤネキ)

そ・の・た・め・に

2025年JAMSTECは、「よこすか」や「しんかい6500」とはまた違った主力選手、浜風に抗って甲子園球場ライトスタンド場外弾をぶちかますことができるロマン系大砲=「ちきゅう」、走・攻・守全てに秀でたトリプルスリーも可能なリードオフマン=「かいめい」、を駆使して、「超深海サンプルリターン」航海を実施します。これらの航海で皆さんにガンガンアピールしたいことは、円熟フルスイングの「よこすか」や「しんかい6500」に「ちきゅう」や「かいめい」(や他の調査船)を加えた、チームJAMSTECとしてのサンプルリターン力の完成度、強さ、そして魅力です。

「知ってもらえば必ず応援したくなる」。ワタクシ、そんな願いを込めて今シーズン、阪神タイガースとJAMSTECのダブル優勝を切望しております。

ぜひこのWebページを通じた発信に注目していただき、

刮目せよ、諸君。血の通ったヒトとモノが導くサンプルリターンの成功を!

共感せよ、諸君。研究航海の現場で繰り広げられる人間ドラマのリアルと歓喜を!

イベントスケジュール

超深海サンプルリターン2025 祭りの始まり編
2025年12月9日(火) 19時ライブ配信開始予定
JAMSTEC YouTubeチャンネルおよびニコニコ生放送にて同時配信
チャンネル登録をしてお待ちください。

今後の配信予定

  • 2025年12月25日頃
  • 2025年12月27日頃
  • 2026年1月2日頃
  • 2026年1月4日頃
※配信日時と内容は航海予定等によって変更する場合があります。

まずはこの記事を読んでワクワクを高めよう!

  • 海と地球の情報サイト「JAMSTEC BASE」
    マリアナ海溝で生命の限界を探る!生命研究の第一人者が現代の“ビーグル号航海”に挑む
    詳細はこちら

3つの研究航海スケジュール

2025/10/31~2025/11/24

IODP3 Exp. 502
T-Petit (Impact of Petit-Spot Magmatism on Subduction Zone Seismicity and the Global Geochemical Cycle)
東北沖プチスポット探査

2025/11/25~2025/12/12

IODP3 Exp. 503
Burial In Trench (Hadal Trench Tsunamigenic Slip History)
日本海溝プレート境界浅部すべりの履歴

2025/12/17~2026/1/23

KM25-12航海
マリアナ沈み込み帯モワーム(MoWAME)の総合調査
-地球生命の生育圧力限界の拡張とアウターライズ・前弧・島弧・背弧熱水循環の化学・生命プロセス理解に向けて-

3つの研究航海について

■海底の小さな火山「プチスポット」と巨大地震の関係に迫る!

IODP3 Exp. 502
東北沖プチスポット探査 “T-Petit”

航海期間

2025/10/31~2025/11/24

調査地点

日本海溝

サンプルリターンを目指す水深

水深5,485m、海底下165m

研究船

地球深部探査船「ちきゅう」

研究航海の概要

掘削調査地点は東北沖、日本海溝にプレートが沈み込む前のとある部分。音波を使った探査により、この部分は堆積層が非常に薄いことがわかっています。研究チームは地震や海底火山に関する物理観測データを組み合わせ、仮説を立てました。

それは「堆積物がかき乱され、薄くなっているのは、“プチスポット・マグマティズム”とよばれる火山活動によるものではないか。また、堆積物の厚さの違いが “地震がおきた際のすべりやすさ” に影響するのではないか」というもの。

「プチスポット」とは海底にある小規模な火山のことで、海洋プレートが沈み込む前、折れ曲がる際にマグマを噴出させると考えられています。プチスポットは2006年に三陸沖の海底で新たに発見されて以降、世界中で見つかっています。しかし、超深海にあるためサンプル採取や調査が難しく、その物理的・化学的・生物学的な影響についてはまだまだ謎の多い火山です。

IODP3 第502次研究航海では、水深約5,400mの海底の下に存在が推定されているプチスポットを地球深部探査船「ちきゅう」によりサンプルリターンすることで、この仮説の検証に挑みます。

■超深海に残された縄文時代の地震を探る!

IODP3 Exp. 503
日本海溝プレート境界浅部すべりの履歴 “Burial In Trench”

航海期間

2025/11/25~2025/12/12

調査地点

日本海溝

サンプルリターンを目指す水深

水深7,630m、海底下160m

研究船

地球深部探査船「ちきゅう」

研究航海の概要

この研究航海で調査するのは日本海溝の水深約7,600m、「ヘイダルゾーン(超深海帯)」と呼ばれる「深海の最奥部」。

調査の目的は、ヘイダルゾーンに地層として記録されている過去の地震(古地震)の調査です。

地層は下側から順に上に向かって積み重なるのが一般的ですが、海底で地震や地すべりがあった場合にはその層の順序が乱れた状態になります。日本海溝の掘削調査で得られた地質試料(コア)にもこの構造が見られることから、この近くでは周期的に海底地すべりが起きていたと考えられています。この航海では海溝から得られたコアの形や成分を分析することで、今から過去1万年前頃までの間に、いつどんな地震や海底地すべりが起きていたかを明らかにしようとしています。

地球深部探査船「ちきゅう」が、これまで培った大水深での掘削技術を生かし水深約7,600mの超深海を目指します。

■世界最深からのサンプルリターン!

KM25-12航海
マリアナ沈み込み帯モワーム(MoWAME)の総合調査
-地球生命の生育圧力限界の拡張とアウターライズ・前弧・島弧・背弧熱水循環の化学・生命プロセス理解に向けて-

航海期間

2025/12/17~2026/1/23

調査地点

マリアナ海溝周辺

サンプルリターンを目指す水深

水深10,929m、海底下40m

研究船

海底広域研究船「かいめい」

研究航海の概要

この航海では、まず地球で最も深い海溝と知られるマリアナ海溝の二つの最深部=チャレンジャー海淵とシレナ海淵でジャイアントピストンコアによるサンプルリターンを行い、「海洋サンプルリターン世界最深記録の更新」に挑戦します。その一つ目の世界記録の更新に成功すると、最も深いところに生息する微生物生態系の発見という二つ目の世界記録もほぼオートマティックに達成できると確信しています。さらに研究の進展によって、史上最も高い圧力条件で増殖する微生物や化学合成微生物の世界記録の更新も期待できます。これがこの航海の最大の目的です。

次にこの航海では、2023年に「よこすか」「しんかい6500」を用いた調査航海で新たに発見された南部マリアナ海溝アウターライズ域の低温熱水活動に注目します。新発見のアウターライズ低温熱水活動域では、ジャイアントピストンコアによるサンプルリターンを行い、その場で起きている未知の化学反応や物質循環、生命活動の調査を行います。これがこの航海の二つ目の目的です。

さらにこの航海では、これまで化学合成生物について詳しく調査が進んでいなかったマリアナ前弧・島弧・背弧域に散在する深海熱水域や蛇紋岩化流体湧水域に焦点を当て、無人潜水機(ROV)やジャイアントピストンコアによるサンプルリターンを行い、新しい化学合成生物の発見や適応・進化の謎に迫ります。実はマリアナ海溝前弧の蛇紋岩海山の調査では、史上最も高いアルカリ性条件で増殖する微生物の世界記録の更新も狙っていたりします。これがこの航海、三つ目の目的です。

いろんな調査環境や研究目標が盛り沢山の欲張りバリューセット航海ですが、そのすべての環境や研究目的に共通しているのが、マントルや地殻深部から湧き出る水=「モホウォーター」の働きとそれに支えられた生態系=「モワーム」です。「あら、出たわね(馴染みのない言葉が)」(ヤネキ)。そう、ぜひこの「モホウォーター」や「モワーム」に違和感を持ちつつ、海底広域研究船「かいめい」の「モワームサンプルリターン」にご期待ください!