運命は天によって完全に決められていて、それゆえに、完全に自由である!編

2013/02/21

川口 慎介(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

【オレ流】
2月19日。「ソリティア熱水域」から「かいれい熱水域」への航走の途上で,船長から最新の気象情報が知らされました。「予報に従えば,今航海中のかいれい熱水域への潜航は絶望的な状況だ」。厳しい状況であることはわかっていたものの,「かいれい熱水域」での潜航調査に残りの全日程を費やそうと南下をはじめたわれわれ研究者にとっては,受け入れがたい情報でした。

予報を信じないでこのまま南下を続け南緯25度の「かいれい熱水域」海域での潜航可能性に賭けるか,予報に従って比較的状況の良い南緯18-19度に戻り「ソリティア熱水域」「ドードー熱水域」界隈で残りの潜航調査を行うか。ベストな成果を得られる1%の確率に賭けるか,ベターな成果を得られる50%の確率を選ぶか。船内の研究者の意見もわかれました。そして,「かいれい熱水域」とそこに棲む「黒いスケーリーフット」に誰よりも思い入れのある西澤首席により決断が下されました。

「ソリティアに向かう!」

2007年日本シリーズ第5戦,53年ぶりの日本一に王手をかけて臨んだこの一戦で,落合監督は8回まで完全試合の先発山井を降ろし,守護神岩瀬を投入,チームを日本一に導きました。勝負は運命のいたずらでどちらにも転がりうるからこそ,決断は結果によってのみ評価されるべきです。航海は残り3日,はたして・・・。そしてこの決断の裏で下された,もう1つの提督の決断とは・・・。


写真:背中の後ろで合掌し海況の回復を祈る研究者