帝王のように

2013/03/21

宮崎 淳一(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

このYK13-03航海も残り1週間となりました。

一昨日の「しんかい6500」揚収から昨日朝にかけて、海底に残っていたOBEMおよびOBSの回収が行われました。
3/14のレポートにて報告した時と同じように、船側のご協力で24時間体制で行われ、無事回収作業を終えることができました。
ありがとうございました。

そして・・・またもや海が荒れてきました(хх。)グスン。
少なくとも3日ほど潜航調査ができなさそうです。
25日15:00には下船地であるポートルイスに向かって、航走を開始しなければならないので残された調査可能日はほんのわずかです。
しかし、そのほんのわずかもまだ保証されてません。

我々、研究者は祈る、そしてひたすら待つのみです・・・

1993年の有馬記念、1頭の名馬がドラマを見せました。
名はトウカイテイオー、父は無敗の三冠馬シンボリルドルフで、名手岡部幸雄が「地の果てまで走る馬」とその能力に絶賛したほどです。
彼は最高の栄誉である日本ダービー制覇までは順風満帆な競走生活を送っていましたが、それ以降は自らのガラスの脚と戦う運命にありました。
制覇した1991年の日本ダービー以降、なんと3回も長期休養を余儀なくされる骨折をしていますが、1993年の有馬記念はなんと1年ぶりの休養明けでの出走でした。
人間もそうですが、1年ぶりとなると仕事、スポーツ全てにおいて勘が鈍り、不安になるものです。
また3度目の骨折ということで気持ちも萎え、圧倒的に不利だと思われたのですが、この馬は勝負根性をむき出しにし、どの馬よりも速く先頭でゴールを駆け抜けたのです。
奇跡の復活と語られていますが、関係者のこのレースに向けた準備、そしてなによりこの馬自身「少ない機会」を悟ったかのような英気の維持に脱帽です。

今回のYK13-03航海は11回の潜航調査予定でしたが、海況不良のため現時点でまだ3回しか実施できていません。
残りの航海期間で当初の目的の全てを達成することが難しい状況にあります。
しかしながら、競走生活のほとんどを骨折休養で過ごしたにも関わらず、少ないチャンスをものにしたトウカイテイオーのように、数少ない調査機会でも充実した成果を挙げられるよう秘策を練り練りしながら英気を養い、海況の回復を祈り、残り少なくなった航海を過ごす所存です。

海底電磁力計


写真1:「しんかい6500」も「うぉーーーーーっ!!」という感じで英気を養っております。
(つい最近気づいたのですが、改良された「しんかい6500」を後ろからいろいろな角度でみると、様々な表情をとるので、楽しいです)


写真2:P.S. 3/16に採取された黒スケさんは元気です。