「ランダー」とは何ぞや?

2013/10/09

(海洋研究開発機構 研究支援部)

スバ(フィジー)を出港して、2日。やっと調査海域に到着いたしました。

昨日の調査では、北里チームの一員である、デンマークの研究者たちがホライゾン海淵外側斜面の6000m 付近に「ランダー」を投入しました。「ランダー」とは、投げ込み式の自立型ロボットで、海底に着くと、プログラムの命令にしたがって、10ミクロン単位で搭載している装置が動いて堆積物中の溶存酸素量を測定します。「しんかい6500」ファンの方、申し訳ない。この測定では「しんかい6500」は使用しません。

しかし、この「ランダー」という装置、とても優れていて、10,000mを超える深度でも調査できるように設計されています。実際、世界最深部のチャレンジャー海淵で酸素プロファイルを現場で測定し、世界を驚かせています。外見はちょっと地味ですが、性能は確かなのです! なお、このultra-deep lander の制作に当たり、デンマークのカールスバーグ財団から資金提供を受けたとのことです。カールスバーグ財団は、「カールスバーグ」というビールを造っている会社が、科学の発展のために作った財団です。みなさん、ビールを飲んで、科学に貢献しましょう。


写真1:外見が地味な「ランダー」

「ランダー」の中央には海底の酸素濃度などを調べるための装置が設置されています。この装置、「ランダー」が海底に着いたら自動で測定を開始します。装置には細いガラス製の酸素センサーが10本付いていて、このガラスセンサーを海底の堆積物に刺して酸素濃度などを測定するのです。
「ランダー」は約11時間、海底で測定を続けるのですが、その間、この中央にある装置は数cmずつ横に移動しながら、何度も何度も海底の堆積物にセンサーを刺します。こうすることによって、微量な酸素濃度の変化を面的に調べることができます。


写真2:「ランダー」の中央にある装置。この装置が矢印の方向に動き、上下にピストン運動するように堆積物にガラスセンサーを差し込みます


写真3:ガラスセンサー。先端にまで微細なワイヤーが入っていて、そこで酸素濃度を測定します。ガラスセンサー内は油で満たされていて、水圧で潰れないように工夫してあります

そして、測定終了時間になったら、「よこすか」からトランスポンダーに信号を発信し、「ランダー」についている錘(おもり)が外され、海面まで浮上します。その際、確実に「よこすか」に見つけてもらえるように、トランスポンダーからは自分で信号を発信して居場所を知らせます。このトランスポンダーはフルデプス用に開発されたものです。
今回、この「ランダー」を使って何度か測定をします。世界で二番目に深い、ホライゾン海淵まで行くのも、この「ランダー」です。皆さんのもとへ結果が届くのはまだ先かもしれませんが、きっと面白い結果を出してくれるでしょう。