SIPが拓く新たなる海洋展開

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
「海洋安全保障プラットフォームの構築」プログラムディレクター(PD)

石井 正一(いしい しょういち)

日本CCS調査株式会社 顧問

資源に乏しい我が国が、自国EEZ 内に存在する海洋鉱物資源の効率的な調査手法と環境負荷が極めて小さい生産技術を開発し、国際情勢に応じていつでも供給可能な体制を構築することは、国の安全保障として、非常に重要な取り組みです。

2023年3月をもって完了した、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2 期「革新的深海資源調査技術」では、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内の深海に、レアアース泥の濃集帯が存在し、且つ、世界的には中国南部等に偏在する重レアアース類を多く含むことを確認するとともに、その分布を明らかにしました。

また、水深約6,000m からのレアアース泥の生産技術に目処をつけるとともに、海洋鉱物資源の調査技術においても、世界初の成果を幾つも生み出しました。

さらに、開発した海洋環境の観測機器は、深海域から浅海域まで観測可能な海洋広域モニタリングシステムとして、多くの海洋産業分野での利活用が期待されています。

このような背景を受けて、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期海洋課題は、安全保障上重要な海洋の保全や利活用を進める「海洋安全保障プラットフォームの構築」として2023(令和5)年4月より5カ年計画でスタートしました。

当課題は、Society 5.0における将来像として、海洋ロボティクスを活用した新たな海洋環境広域モニタリングシステムの技術開発やEEZ 内の海洋鉱物資源の利活用の促進、新たな大規模CO₂回収・貯留技術(CCS)の基礎研究などで、特定国に依存しない、新たな資源供給網の整備と2050 年カーボンニュートラル実現に貢献することを目標として、研究開発を実施します。

本プログラムを通じて、海洋産業のさらなる活性化が図られ、海洋国家・日本の未来が大きく切り拓かれるものと確信しています。

皆様からの一層のご理解、ご支援を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。