研究開発テーマ

本事業を推進する研究テーマを紹介します

テーマ1 レアアース生産技術の開発

日本の南鳥島EEZ海域には、産業化が期待されるレアアース資源(レアアース泥)が存在しています。これを有効に活用すれば、特定国への依存から我が国のレアアース供給が脱却できます。そのためにレアアース泥の分布・賦存量の精査を進めていきます。地球深部探査船「ちきゅう」を使用し、水深6,000mに位置するレアアース泥の採鉱と製錬の実証試験を実施する予定です。連続的な採鉱・揚泥・製錬を実施することで、深海レアアース開発の検討に必要な技術や指標となるデータを提供します。選鉱、製錬、製品化プロセスを経済的に行う一貫供給システムの開発を進め、国産レアアース生産の社会実装を加速します。

これまで深海域の調査機会が少なかった我が国の民間海洋調査企業に対して、新たな技術移転の機会を提供します。これにより国内海洋関連産業の活性化に貢献します。

テーマ2 海洋環境影響評価システムの開発

システムを開発するため、最良の技術による環境影響評価の手法改良、データ利活用スキームの構築、産業化モデルと国際展開の活動を実施します。環境影響評価の手法改良では、生物多様性調査や環境計測、海洋環境モニタリングに加え、長期の定点観測ができる「江戸っ子1号」と迅速に広範囲を調査できるAUVとが連携したモニタリングの技術の開発を進めます。データ利活用スキームの構築では、AIを使ったデータ解析や海洋環境モデルのデジタル化を行います。産業化モデルと国際展開では、海洋環境マネジメントの試作、民間でのデータ利活用と海洋環境マネジメントにもとづく産業化モデルを考案してその有用性を検討します。国際展開では、太平洋島嶼国を中心とする国際セミナー、国際会議のサイドイベント、また調査観測への技術協力などにより成果と技術を発信します。

これらの取り組みにより海洋産業の育成を促進し、多様な海洋環境課題への貢献を目指します。

テーマ3 海洋ロボティクス調査技術開発

海底資源探査時や生物多様性条約COP15の「30by30」目標達成のためにも、複数の自律型無人潜水機(AUV)を用いた効率的、かつ広範な海洋モニタリングシステムが求められています。AUVを効率的に運用し、広域モニタリングを行うためには、AUV協調群制御技術、そして定点環境影響評価システム「江戸っ子1号」や深海ターミナルのIoT化をとり入れたシステム連携が必要です。

そこで研究開発では、海洋広域モニタリングに資する、1)複数自律型水中ロボットの協調群制御、2)航行型AUVドッキングも対象とした深海ターミナルの2つの主要な技術に焦点を当てています。両技術とも2027年までに段階的な開発が計画されており、各段階での試験と改良を経て最終的にシステムの社会実装の実現を目指します。観測システムのIoT化を進めるとともに各種装置の改良を行うことで、大容量の海中観測データを迅速に取得できるシステム開発を行います。さらに、新たな社会ニーズを喚起する小型安価AUVの設計・試作を含み、実海域で全体システムの検証を行います。これらの技術開発を通じて、大学・民間企業との連携を進めながら、海洋環境の保全と海洋産業の育成を目指します。

テーマ4 海洋玄武岩層を活用した大規模CO₂貯留・固定化技術に関する基礎調査研究

本テーマでは、我が国における2050年カーボンニュートラルの実現に向け、CCS事業のより一層の普及促進に貢献するため、海洋玄武岩層を活用したCO2貯留・固定化技術についての基礎調査研究を実施します。具体的には、南鳥島EEZに位置する拓洋第5海山を研究対象とした地質調査を実施し、玄武岩で構成される海山の山体内構造や物理化学的な特性を明らかにします。また、海洋玄武岩層へのCO2圧入に伴う浸透率や力学物性等の変化を室内実験により検証しつつ、最適圧入技術や鉱物固定化技術について検討を進め、CO2貯留・固定化に関するシミュレーションを行います。最終的には、CO2海上輸送や洋上圧入システム等を考慮し、海洋玄武岩CCSの概念設計の構築を目指します。