地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

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脱落、そして復帰

スラスター概念図

スラスター概念図

 「ちきゅう」が持つ6基のアジマススラスターのうち、船尾2基は常時使用可能な固定式タイプ、その他4基は船内に格納可能な昇降式タイプのスラスターであり、油圧により揚降が可能となっている。これらのスラスターは、掘削時は全基使用し、航行時は2基~6基を状況に応じて使用している。2011年3月11日の震災の時、破損してしまったのはこのうちの1つだった。当時、八戸港にいた「ちきゅう」は、地震による津波によって船尾を港湾にこすりつけられた。そして巨大な船の重みが、船尾左にあるスラスターに、一気にのしかかってしまったのである。
「アジマススラスタはプロペラを回転させる他に、ギアケースを回転させるための旋回機構を持っています。今回、この旋回機構の一部であるギアケースとつながっている旋回継手という部分が折れてしまい、ギアケースが脱落してしまいました。」石渡技術副主任によれば、幸いにもプロペラは修理して使える状態だったが、ギアケース自体は破損が激しく作り直さなければいけなかった。しかも鋳造で作られた一体物なので、発注しても、まず鋳造のための型を作る必要がある。新しいアジマススラスターの取り付けは今年の6月に行われたが、脱落から取り付けまで1年以上かかった理由がここにある。
 その間「ちきゅう」は残った5基のスラスターで運用せざるをえなかった。「一定の位置に留まることは出来ましたが黒潮のように流れが強い場所で位置保持することは難しいです。」こういうこともあって、南海トラフにある断層の掘削など黒潮が流れる海域の調査はこの1年あまり行われていない。「ですが、6基のアジマススラスターがそろった今、「ちきゅう」は以前と同じ能力を発揮できます。」石渡技術副主任はそのように喜びを語ってくれた。