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2011年 4月 28日
独立行政法人海洋研究開発機構

深海調査研究船「かいれい」による海底地形調査結果について(速報)
〜東北地方太平洋沖地震に伴う震源域近傍における海底変動〜

1.概要

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏、以下JAMSTECという。)では、平成23年3月15日から31日にかけて文部科学省の科学研究費補助金(特別研究促進費)による「2011年東北地方太平洋沖地震に関する総合調査」の一環として、東北地方太平洋沖地震の震源域で反射法地震探査、測深器を用いた海底地形の調査等を行いました。

調査は、東北地方太平洋沖地震の震源域・津波波源域において、JAMSTECが所有する深海調査研究船「かいれい」(以下「かいれい」という。)により、平成11年に実施した調査(KR99-08)と同一測線上で観測したデータ(KR11-05)の比較を行い(図1)、地震に伴う海底地形・地下構造の変化を調べました。

海底地形調査の結果、震源近傍から海溝軸に至る領域が南東〜東南東方向に約50 m移動し、上方に約7 m移動した可能性があることが判明しました。

2.成果

今回、海底地形調査結果として、海溝軸の西側で特に大きな変位があることが判明しました(図2)。この変位は今回の地震によって生じた海底地形の変化を示しており、本震震源近傍から海溝軸に至る領域(海溝軸の西側の領域、図2で示している40kmの領域)が南東〜東南東方向に約50 m移動し、上方に約7 m移動した可能性を示しています(数値は0.5%程度の深さ方向の誤差をもつ(※1))。

これまでに、海上保安庁、東北大学の海底地殻変動観測から、本震の震源域付近の地殻変動観測点においてそれぞれ24mから31mの水平変動が報告されていました。それらに今回の結果を加えることによって、宮城県沖においては、それぞれ海底面の変動は日本海溝の海溝軸まで及んでいることが新たに判明しました。このことは、地震に伴う破壊が海溝軸まで及んだことを示唆しています。

また、海溝軸付近の海底(水深約7600 m)に幅約1500 m、高さ約50 mの地形変化(高まり)が見られ、海溝軸底の直ぐ陸側部に地形が低く変位した斜面があることから、海底地すべりに伴う地形変動であると思われます(図3)。

3.今後の予定

JAMSTECでは、今回調査の地下構造に関するデータ(図4)の解析については現在鋭意進めており、今回の地震による地下構造の変化についての解明に努めています。また今後はより広範囲に地下構造及び海底地形の調査を実施し、今回の地震に伴う大規模津波発生のメカニズムを明らかにしていく予定です。

※1 海底地形調査は本来広域の地形を把握するためのもので、一般的に水深の0.5%程度の深さ誤差をもつ。そのため、今回の結果も水平偏差でプラスマイナス20mの不確定さ、上下偏差で10mの不確定さを持つ。今回は、地震に伴う海底変動が大きかったため、海底地形調査でも地震前後の海底変動が観測された。

参考


図1:黒太線が「かいれい」調査測線(KR99-08, KR11-05航海)の位置を、黄色の星印が平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の本震の震央をそれぞれ示す。


図2:地震後(KR11-05)と地震前(KR99-08)の海底地形の差。矢印つきの実線で示される海溝軸の西側(144度より西側)で地震前後の海底地形の差が大きく、10〜20 m高くなっている。実線で示した部分は、今回の調査で陸側斜面が南東〜東南東方向に約50 m移動し、平均7 m上方に移動したと見積もられた領域。


図3:海底地形断面図。赤線が地震後(KR11-05)、黒線が地震前(KR99-08)のデータ。白色に塗られた部分が、海底地すべりに伴う地形変動を示す。


図4:KR11-05反射法地震探査記録データ(縦軸は、海面から発した音波が海面に戻ってくるまでの時間)黒枠は、図3に示す海溝軸付近の領域を示す。

お問い合わせ先

独立行政法人海洋研究開発機構
(本研究について)
地球内部ダイナミクス領域 海洋プレート活動研究プログラム 海洋底ダイナミクス
観測研究チーム 技術研究主任 冨士原 敏也  046-867-9324
地震津波・防災研究プロジェクト データ解析グループ
技術研究副主任 野 徹雄 045-778-5392
(報道担当)
経営企画室 報道室 奥津 光 電話:046-867-9198