知ろう!記者に発表した最新研究

2009年7月30日発表
地球深部探査船「ちきゅう」速報!
ライザー掘削くっさくで海底下1,600mに達した!

地球深部探査船「ちきゅう」(解説1)(参考:キッズ向け「ちきゅう」)のニュースです。現在、紀伊半島和歌山県沖で海底を っている「ちきゅう」の掘削の深さが、ついに海底下1,600mに達しました!以前の発表でもお伝えしたように、ここ紀伊半島和歌山県沖は長い間同じ場所にとどまって海の底を掘る航海にはきびしい環境です。黒潮くろしおという速い海流や台風が通り、また海の深さが2,000m以上もあるからです。そんな中でライザー掘削(解説2)(参考:?ライザー掘削ってなに?)にいどんだ「ちきゅう」は、このたび、ついに海底下1,600mまで掘り進みました!

統合国際深海掘削計画とうごうこくさいしんかいくっさくけいかくIODPアイオーディーピー解説3)をリードする国として、これは大きな実績です。「ちきゅう」に、大きな期待がよせられます。

今回、「ちきゅう」は何を調べたの? 海底下1,600mまで掘り、地球内部について調べました 
また、海底と掘った孔に地震計を置いて、海上の船と連携させて海底下を調べました。
  したこと 研究者の解説
1 掘り進みながら、あなの中の調査 小さな計測センサーをドリルパイプ(海の底を掘るところ)の先に付けて、掘りながら調査できるようにしました。結果、地層にふくまれている物質、水の量、孔の中の様子などのデータがいち早く手に入りました。
2 海底下約1,600mのまでの地層のサンプルの取りだし 地層には、地層ができた時代にいた生物などがふくまれています。ですから、何がどんな状態でどれくらいの厚さになっているのかを調べれば、その場所でいつ何があったのかがわかります。

写真1:中央の銀色の細い管の中に、サンプルが入っています

3 掘った後に、孔の中の調査 孔の中に計測センサーをおろしました。地層の中の地震によるゆれ、温度、水の量、かたさ、かかる力の強さなどを調べました。
4 海底下の構造の探査 「ちきゅう」が海底と掘った孔の中に設置した地震計、そして深海調査研究船「かいれい」を連携れんけいさせて海底下の構造を調べました。結果、今までよりもくわしいデータをとることができました。
この調査は、地層の中の物質によって地震波の伝わり方が変わる性質を利用したものです。調査の流れは次の通りです。
【1】
「かいれい」のエアガンと呼ばれる装置から海底に向かって人工の地震波を出します。
【2】
地震波は地層の中を進みます。この時地震波の速さは、地層の中の物質によって変わります。物質がかたいと速く伝わり、やわらかいとおそく伝わるのです。また、別の地層との境目でははね返ったり曲がったりします。
【3】
地震波がどんな風に伝わったかを、地震計(解説4)が記録します。
【4】
研究者はこのデータを解析かいせきして、海底下の構造を明らかにします。

図:海底下をくわしく調べられる地震計と「かいれい」の協力プレー

これからはどうするの? 第2次研究航海に進みます

今回の第1次航海は、2009年8月1日に終わります。続いて第2次研究航海に進み、次の地点を掘ります。一方、研究者はこのたび得られたデータをくわしく解析して、すばらしい研究結果を出せるようにがんばっています。成果に期待してくださいね!

まめ知識

写真2:海の底を掘る部品 ドリルビット

ドリルビット(写真2):海の底を実際に掘る部品です。地球内部はとても固いので、ドリルビットはすぐにダメになってしまいます。何度も交換こうかんしながら、海の底を掘り進みます。真ん中の黒い丸の部分は空いています。ここから地層のサンプルを取り出します。


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解説が入る

解説1:「ちきゅう」

海の底から7,000mの深さまでドリルで掘り進み、地層のサンプルを取ってくる船です。サンプルを調べることで、地球内部のなぞを解き明かします。


解説2:ライザー掘削くっさく

海底で堀った孔がくずれるのを防ぎながら、深く掘れる方法です。砂浜で穴を掘った時、海水がしみて穴がくずれてしまったことはありませんか?海の底でも同じように、ふつうに掘るだけでは孔はくずれやすくなってしまいます。これを解決して安全に深くまで掘れる方法がライザー掘削です。

解説3:統合国際深海掘削計画(IODP)

地球がどんな星なのかを明らかにする国際プロジェクトです。科学掘削船かがくくっさくせんで海の底を掘って、巨大きょだい地震が起きた所を調べたり、人類がまだたどりついたことのないマントルを調べます。

解説4:地震計

地震が起きた時は、地震波という波が発生します。これが地中を伝わることで、地震のゆれは広い範囲に広がります。地震計は、この地震波を利用して地震のゆれの大きさを調べる装置です。


黄色いカバーの中に、地震計や記録計などが入っています。これを海底に置きます。