2010年6月25日発表
南極海での気候の変化は、
遠くはなれた北太平洋底層 の水温変化と連動 する!
2004年、北太平洋の
では、なぜ北太平洋の底層の水温は上がったのでしょう。研究者は、海の様子をくわしく調べられる「データ
図1:北太平洋と南極海は、40年の差で連動する!
海の熱の変わり方を
大陸を
図2:水温の
先ほどお話ししたように、水温で0.005℃の差は大きな変化。北太平洋の底層では大きな変動が起きつつあると言えるようです。さらに、北緯30度線、
海洋学の研究方法は大きく2種類あります。
図3:データ同化システム
研究者はそのデータ同化システムを使ってスーパーコンピュータ地球シミュレータ(解説2)でシミュレーションを行い、北太平洋の底層の水温を上げた原因がどこから、どうやって伝わってきたのかを調べました。
水温を上げた原因の道のりをさかのぼってたどると…。なんと、赤道をこえて南下を続け、最終的には南極のアデリー海岸にたどり着いたのです(図4)。
図4:約40年さかのぼると、アデリー海岸にたどりついた!
そのアデリー海岸で海水がいつもに比べて冷やされなかったことが主な原因であることがわかりました。そして、その
今回の研究によって、海の熱の変わり方の理解が進みました。同時に、今回開発したデータ同化システムが海洋研究にとってかけがえのない役わりを果たすことも証明されました。今後は、この同化システムを使った研究と
まめ知識
南極海は、どんなところでしょう。「寒いところ!」と思ったみんな、大正解。その
図5:太陽の熱の受けかた
さらに南極の白い氷は太陽の光をはね返します。ですから南極周辺は、南極大陸と比べてあたたかい海の近くでも年平均気温は-10℃を下回る寒さです。
次に、南極海についてお話ししましょう。海の水温は
図6:南極海のしずみこみ現象
さて、本題の南極海と気候の関係に進みます。たとえば気温の変化を考えてみます。気温が低いとき、冷たい大気は海を冷やします。ですから、海は熱が減って水温が下がります。逆に、大気は熱をもらって気温が上がります。こうして大気と海はおたがいに影響をあたえあいながらあたたかくなったり冷たくなったりして気候をかたちづくります。そして、ここで南極海のしずみこみ現象が重要なのです。しずみこみ現象によって、冷やされた海水は海底に追いやられると、すぐにそれをおぎなうように表層のあたたかい海水がやってくるので、海水が入れかわります(図7)。これが続くことによって、海と大気の間ではいつも大量の熱がやりとりされているのです。また、しずみこんだ水は世界中の海底に向かって、まわりの水と
図7:南極海での大気と海との熱のやり取り
こういった南極海での様々なしくみは、たくさんの熱や海にとけこんだ物を海がどのように運んでいくかというむずかしい問題をふくんでいます。熱や物を運ぶ海水の
以上の理由から、南極海における熱のやり取りのメカニズムやその変化を知ることは、地球全体の気候を理解し変動を予測する上で極めて重要です。地球の気候は将来どうなっていくのでしょうか。研究者は、そんなダイナミックなテーマに
解説1:ツール
道具という意味です。ここでは、その研究をするために使うモデル、プログラムを指します。
解説2:地球シミュレータ
計算がとても速いスーパーコンピュータです。地球のしくみや地球の未来がどうなるのかを、計算によって明らかにします。
解説3:ブイ
海面や海水中で、自動的に海の水温、塩分、流速などを観測する装置です。
解説4:
海水は、−2℃以下にはなりません。−2℃以下になると、こおって海氷になり ます。ですから、海水の状態であるということは、−2℃よりも高いということにな ります。