知ろう!記者に発表した最新研究

2011年4月26日発表
重力が高くても、生命は存在そんざいできる!

地球は、いま生命の存在が確認かくにんされているたった1つの星です。大むかしに生命が誕生たんじょうし、長い年月をかけて微生物びせいぶつからさまざまな生物へと進化しました。では、他の星に生命は存在そんざいするのでしょうか。

宇宙には無数の星があり、地球より重力の高い星もあります。そんな高い重力のもとでも、生命は生きていけるかを知るために、このたび出口 茂でぐちしげる博士はかせは、装置そうち を使って微生物を高い重力がかかったのと同じ 状態じょうたいにしていきました。その結果、地球の40万倍の重力がかかっても、大腸菌だいちょうきんとパラコッカスデニトリフィカンスという微生物は生きていけることがわかったのです!

この成果によって、高い重力のもとでも生命の存在する可能性かのうせいが示されました。宇宙人がいる見込みこみが、高くなったかもしれません!?


重力ってなに?
中心に向かってものを引きつける力です

宇宙の星たちは、それぞれ大きさも成分もまったくちがいます。けれど、すべての星の表面には、中心の方へ向かってものを引きつける重力(解説)が働いています(図1

重力

図1:重力


その重力の大きさは星によってことなります。たとえば、木星は地球の約2.5倍です(図2)。

星によってちがう重力の大きさ

図2:星によってちがう重力の大きさ


そこで出口博士は、高い重力のもとでも生命は生きていけるかを知るために、実験にいどみました。

どんな実験をしたの? 遠心機を使って、微生物に高い重力がかかったのと同じ状態にしました

出口博士は、5種の微生物(大腸菌だいちょうきん乳酸菌にゅうさんきん酵母菌こうぼきん、パラコッカスデニトリフィカンス、シュワネラ アマゾネンシス)を遠心機えんしんきにかけていきました(図3)。


実験に使った微生物

図3:実験に使った微生物



遠心機とは、頑丈がんじょうなボディの中に回転子が入った装置です(図4)。微生物を容器ようきに入れて回転子にセットして、ボディの中で高速で回転させれば、微生物は高い重力がかかったのと同じ状態になるのです。

実験

図4:実験


結果はどうだったの? 高い重力のもとでも、2種類の微生物は生きていけました!

実験の結果、地球の40万倍の重力がかかっても、大腸菌とパラコッカス デニトリフィカンスの2種類は生きていけることがわかりました(図5)!40万倍は、現在の遠心機で作り出せる最大です。

パラコッカス デニトリフィカンス

図5:パラコッカス デニトリフィカンス

その微生物は、どこにでもいるふつうの種類です。どうして高い重力でも大丈夫かを調べたところ、サイズが小さくて体のつくりが単純たんじゅんだと重力に強いと判明しました。

これからはどうするの? 生命のなぞをさらに追及します

この成果は、高い重力のもとでも生命の存在する可能性を示します。宇宙生命体の探査の範囲はんいを広げる必要があるかもしれません。

微生物と重力の関係についてくわしく知るために、出口博士はこれから追加の実験を行う予定です。

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解説が入る

解説:重力

引力と遠心力が合わさった力です。