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イカ研究所 & JAMSTEC 共同研究

  • 2018.8.8

    共同研究30「地球を語る“有孔虫”」

    海には、プランクトンやマリンスノーなど、さまざまなものが浮遊している。
    スプラトゥーン2オクト・エキスパンションのロード画面をご確認いただきたい。さまざまな形をした浮遊物が確認される。我々はこの浮遊物の採取に成功し、調べたところ、有孔虫(ゆうこうちゅう)のような生物であることが判明した。

    スプラトゥーン2オクト・エキスパンションのロード画面(拡大図)

    有孔虫とは、炭酸カルシウムの殻をもつ単細胞生物(たんさいぼうせいぶつ)である。つまり、貝殻のような殻を持つが、貝ではなく、もっと原始的な、ひとつの細胞しか持たない生物である。
    孔(あな)の有る虫、と書いて有孔虫。その名のとおり、殻にはたくさんの孔があいている。

    有孔虫の一種、Ammonia beccarii (アンモニア・ベッカリ)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真。小さな孔(あな)がたくさんあいているのがわかる。スケールバーは100マイクロメートル(0.1ミリメートル)。写真提供:長井裕季子(JAMSTEC)

    海中をただよいながら生活するもの(浮遊性有孔虫:ふゆうせいゆうこうちゅう)と、海底にすむもの(底生有孔虫:ていせいゆうこうちゅう)がいる。沖縄のお土産で有名な「星の砂」も底生有孔虫の一種である。

    海中をただよいながら生活する浮遊性有孔虫(ふゆうせいゆうこうちゅう)のGlobigerinoides ruber (グロビゲリノイデス・ルーバ)。周りにのびている糸のようなものは仮足(かそく)と呼ばれ、これでエサをつかまえたりする。写真提供:木元克典(JAMSTEC)

    浅い海の海藻の上にいる底生有孔虫(ていせいゆうこうちゅう)、Elphidium cripsum (エルフィディウム クリスパム)(写真中央。ピンクのものは海藻)。写真提供:豊福高志、長井裕季子(JAMSTEC)

    有孔虫は5億年以上も昔の先カンブリア紀からいて、世界中の深海にも浅い海にも生息している。地層の中に化石となって残っており、それを調べることで過去の地球環境がわかるため、多くの研究がなされている。この小さな生物から、その有孔虫が生きた時代がどのような環境だったかという、地球の歴史を読み解くヒントとなるのだ。

    有孔虫の化石。小笠原諸島の母島で見ることができる大型の有孔虫、「貨幣石(かへいせき)」。

    また、本来は弱いアルカリ性の海水が、酸性側に傾いていく海洋酸性化が問題になっており、殻を持つ生物が大きな影響を受けると考えられているが、この研究にも有孔虫は使われている。JAMSTECでは、生きた有孔虫を飼育して、どのように殻をつくるのか、そして酸性化が進んだ海を再現し、その中で飼育したらどのような影響を受けるのかを調べている。

    多くの有孔虫は、1ミリメートルに満たないほど小さいが、壮大な地球の歴史や、環境の変動を語る生物なのである。
    イカ世界の環境変動も、この有孔虫のような生物を調べることで明らかになると期待される。

    殻を作る底生有孔虫、Ammonia beccarii (アンモニア・ベッカリ)。有孔虫の殻はたくさんの「部屋」が連なっているような形をしている。右側の透明に見える部分が新しくできた「部屋」。詳しくは、【JAMSTEC×niconico深海研究部】“有孔虫”を観察しよう~顕微鏡の中の小宇宙~顕微鏡をのぞいてみよう編

    映像提供:豊福高志、長井裕季子(JAMSTEC)

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