金属資源は私たちの社会基盤を支える必須のモノであり、古くから鉱床探査、掘削や鉱物処理まで様々な技術開発・研究が進められてきました。また、鉱床の成因 (でき方) に関する理学的研究も古くから進められ、様々な知見が蓄積されてきました。特に、海底熱水鉱床は将来の金属資源として重要な研究対象であり、多くの研究航海により調査が行われ、成因や将来の産業利用を目指した研究が進められています。海底熱水系では300℃を超える高温の熱水が噴出しており、鉱床生成プロセスのほとんどは無機化学的・非生物的 (abiogenic) に説明できる、というのが現在の鉱床学の通説となっています。しかし、実際の鉱石試料から微生物活動由来のデータが得られたことから、海底の微生物活動が鉱床成因に寄与する可能性が示されました。この問いを定量的に解明するために、本研究領域では『微生物』と『鉱床』の共通材料である『硫黄』に注目し、局所硫黄同位体分析・シンクロトロン・メタトランスクリプト―ムという先進的分析技術を駆使することで、硫黄代謝微生物と硫化鉱物の間で生じる反応プロセスを定量的に評価することを目指します。
本研究領域では、鉱床成因論と密接にリンクする『地質学 (鉱床学)』『地球化学』分野に新たに『微生物学』の視点を融合させ、資源分野全体を包括する『生物鉱学 (BIOre) 』という新たな学問の創成を目指します。このBIOreは、BiologyとOre (鉱石) を合わせた造語であり、海底下における大規模金属鉱床のbiogenicな成因論の構築のみならず、その知見を生物工学的に応用することで新たな鉱物処理技術開発へと繋げる、資源分野における変革研究となることを期待するものです。また、『生物鉱学』という新しい学問および研究者コミュニティーの創造を参画者一体となって目指すことにより、異分野間の研究体制をより強固なものにすることを目指します。特に若手研究者が自由な発想に基づいて活躍できる場を提供し、産学連携を見据えた活動を推進することで資源分野の活性化を図ります。
本研究領域は以下の4つの計画研究班から構成されます。
各研究班体制の詳細はこちら。