東北大学 流体科学研究所

東北大学・流体科学研究所にある次世代流動実験研究センター(Advanced Flow Experimental Research Center)に属する低乱風洞実験施設は、世界有数の低乱風洞と世界最大の磁場により模型を支持する磁力支持天秤を中心に構成された施設であり、世界にたぐいない性能と計測技術で日本企業の産業競争力強化に貢献いたします。

低乱熱伝達風洞

施設の概要と特徴

 低乱熱伝達風洞は、機械工学、航空工学、土木工学、建築学、気象学など各種の基礎研究及び応用研究を実施する上で好適であり広い分野の研究・実験に使用できるように設計された単路回流型の汎用低乱風洞です。
測定部は開放・密閉両型式に交換可能であり、風の性質が極めて良い(乱れ強さが極めて低い)のが特徴で、その性質は国内最高水準の値(密閉型測定部で 0.02%以下)を誇り、世界でも有数の設備として知られております。

低乱熱伝達風洞

磁力支持天秤装置(MSBS)

 この装置は模型を磁気の力で気流中に支持すると共に、模型が気流から受ける力も計測できる装置です。本装置は、対辺距離が1mの正八角形の測定部を持つ世界最大の大きさを誇る磁力支持天秤装置であり、風洞模型を支える支柱の影響が無い試験が可能となるほか、模型に様々な運動をさせることもできます。

磁力支持天秤装置 (MSBS)

小型低乱風洞

施設の概要と特徴

 小型低乱風洞は、低乱熱伝達風洞の3.5分の1スケールの小型低乱風洞であり、小回りがきいて手軽に実験の出来る風洞です。
本風洞は、小寸法の模型を用いた実験研究や実験に使用する各種プローブ類の検定、低乱熱伝達風洞を用いての実験に先立つ予備実験などに常時使用されています。

小型低乱風洞

施設の利用事例

槍の空力性能評価 (2015.11)

利用目的

 陸上の投擲競技用品であるヤリの開発を目的として、 ヤリに働く空気力をMSBSにより測定した。 海外メーカーは、追い風用の穂先、向い風用の穂先を製品化している(国内では、未着手)。

内容

 今回、海外メーカーが製作した追い風用、向い風用、オールラウンド用の穂先を模倣して製作し、その空力的効果を調べた。 迎え角は‐5~5°、風速は15~25m/sの範囲で試験した。また、グリップ用紐が無い場合、有の場合(66mm、130mm)の比較もした。

成果の概要

 上競技のヤリ投げで使用するヤリに働く縦3分力を測定した。 従来ヤリの風洞試験では、ヤリの直径よりも支持棒のそれの方が太く、実質、ヤリに働く空気力の測定は不可能であった。 今回、無回転ながら、ヤリに働く空気力測定を実行できた。これにより、先端形状の違いやグリップ紐の巻き数差による空気力の差も評価できるようになった。 これらの差は数gf程度であり、MSBSだからこそ、これらの小さな空気力差を測定できたと考えている。

MSBSを用いた競技用ヤリの風洞実験

感圧塗料を用いたモデル表面の圧力分布の調査 (2015.7)

利用目的

 自動車の車体周りで発生する空力現象のメカニズム解明のためには、車体表面の圧力計測が必要と考える。本課題では、簡易形状を供試体とし、感圧塗料を用いた表面圧力の計測が可能かを調査する。

内容

 低乱風洞で単純な箱モデルを供試体とし、感圧塗料による車体表面圧力の計測を行う。光源、カメラの供試体までの距離や風速を変えて、設置環境の異なった場合の計測結果への影響についても調査した。

成果の概要

 感圧塗料を用いた模型表面の圧力計測は可能であることが分かった。また、弊社設備の機材設置環境 (光源やカメラから供試体までの距離を変更) を模擬した場合においても、圧力計測が可能であることが分かった。
(スズキ株式会社)

感圧塗料を用いたモデル表面の圧力分布調査

その他の利用事例

施設の所在地

〒980-8577 仙台市青葉区片平二丁目1-1東北大学流体科学研究所次世代流動実験センター低乱風洞実験施設リエゾン室