地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

CDEX
Discover the Earth:大陸地殻誕生の謎に挑む

太陽系の惑星の中で地球だけに存在する大陸。この大陸地殻がどうやってできたのか、実はよくわかっていない。
伊豆半島からマリアナ諸島にかけての海域では、継続的な調査が行われ、この謎を解く手がかりが少しずつ明らかになってきている。今年からは海底掘削プロジェクトも本格的にはじまる予定だ。
大陸地殻誕生の謎に迫る研究の最前線を地球内部ダイナミクス領域の田村芳彦チームリーダーに聞く。
(2014年3月 掲載)

取材協力
田村 芳彦
IODP第350次研究航海共同首席研究者
JAMSTEC地球内部ダイナミクス領域
地球内部物質循環研究プログラム
チームリーダー

できたてのマグマを世界ではじめて発見

 海底に広がる海洋地殻はおもに玄武岩、陸地を形づくる大陸地殻はおもに安山岩からできている。ただ、マグマからどのようにして安山岩が生まれ、大陸地殻ができていくのか、長い間大きな謎とされてきた。
 「この謎を解くには、まずマントルが溶けて、最初にどんなマグマができるのかを明らかにする必要があります」と田村芳彦チームリーダーはいう。しかし、通常のマグマはマグマだまりを通って地表に噴出する間に組成が変化してしまう。生成されたばかりの「できたてのマグマ(初生マグマ)」を手にすることが研究には不可欠である。
 2013年、その初生マグマが田村チームリーダーらの研究チームによって発見された。2010年、マリアナ諸島のパガン島周辺で行われた潜航調査で、水深2,000mの地点から枕状溶岩を採取し、分析したところ、初生マグマに非常に近い未分化なマグマからできていることがわかったのである。マグマだまりを経ず、直接海底に噴出したものらしい。
 パガン島は「伊豆小笠原マリアナ弧(IBM弧)」とよばれる海洋性島弧の火山の一つである。伊豆半島から小笠原諸島、マリアナ諸島へと2,800キロメートルに渡ってつづくこの地域は、フィリピン海プレートに太平洋プレートが沈み込む「沈み込み帯」にあたり、今も活発に活動をつづける海底火山や火山島が弧を描くように多数点在している。昨年、新たな島が出現して話題となった西之島もその一つだ。プレートの沈み込みにともなって、大量の水や堆積物が地下深部へと運ばれ、これがマントルを溶けやすくしてマグマが生成される。このマグマが上昇することで多くの海底火山ができるのである。
 初生マグマの解析の結果、2種類の初生マグマが混ざり合わずに噴出していることがわかった。このことから、沈み込むプレートからマントルに供給される物質は2種類あって、それらが別々にマントルを溶かし、異なる初生マグマをつくると考えられる。初生マグマを手にしたことで、これまでは推論するしかなかったマグマの成因が、詳細にわかってきたのである。


大陸地殻掘削プロジェクト 掘削予定地点
大陸地殻掘削プロジェクト 掘削予定地点
掘削地点の海底下地殻構造概念図
掘削地点の海底下地殻構造概念図