掘削しながら研究できる
図1.日本周辺の海底資源分布 |
- 木川
- 増田先生のメタンハイドレートとの出会いは?
- 増田
- 大学院修了後、石油会社に就職したのですが、石油生産基地での研修期間中にガス脱湿装置の動作を見誤り、天然ガスを送るパイプラインをハイドレートで詰まらせてしまったことがありました。そのとき、「一度できたハイドレートはなかなか分解しないのだ」と身をもって体験したのが出会いですね。その後、大学に戻り資源としてのメタンハイドレートの研究を始めたのです。
- 木川
- メタンハイドレートは、次世代エネルギーとしてかなり注目されていますね。
- 増田
- 「燃える氷」と呼ばれるメタンハイドレートは、天然ガスの主成分であるメタンを含む氷と同じような固体です。海底下の低温で高圧の地層に存在していて、日本周辺でも大ガス田に相当する資源量を持つ濃集帯があることがわかっています。さらに燃やしても発生する二酸化炭素の量が石油より少ないというメリットがあります。MH21プロジェクトが2013年始めに行う第一回海洋産出試験では、海底下のメタンハイドレートからガスを生産します。これは世界で初めての試みで、来年2月には生産試験用の井戸を東部南海トラフ海域の海底に仕上げます。
- 木川
- このような作業は「ちきゅう」以外の掘削船でもできるのですか?
- 増田
- やはり、掘削しながら研究できる「ちきゅう」じゃないと難しいですね。通常の石油掘削リグでは、多くの研究者が乗船して作業するスペースも実験設備もありませんから。