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木川 栄一 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海底資源研究プロジェクト プロジェクトリーダー |
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増田 昌敬 東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター 准教授 メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21) プロジェクトリーダー |
日本周辺の海底は、世界有数の資源の宝庫といわれ、世界第六位の広さを持つと言われる排他的経済水域内の海底資源に注目が集まっている。JAMSTECでは、海底資源の研究や技術開発を集中的に行うため、2011年4月から、「海底資源研究プロジェクト」が始まった。無人で海底を探査できるロボットや地球深部探査船「ちきゅう」を活用して、海底という未知の世界に眠る物質や生態系の基本的な理解を深めるための研究を行う。
「ちきゅう」は、経済産業省が2012年度に行う「メタンハイドレート」の第一回海洋産出試験にも活用される。メタンハイドレートは、次世代エネルギーとして期待される海底資源で、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を中心とした産学共同研究チーム「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)」が、実用化に向け取り組んでいる。そのプロジェクトリーダーを務める東京大学大学院増田昌敬准教授を迎え、JAMSTEC海底資源研究プロジェクト木川栄一プロジェクトリーダーと海底資源の研究から見た「ちきゅう」への期待について対談していただいた。
(2011年11月 掲載)
科学掘削と海底資源
- 木川
- 初めてお会いしたのは「ちきゅう」でご一緒するより前でしたね。
- 増田
- 2002年にIODP(統合国際深海掘削計画)の会議のときに、当時ワシントンD.C.にいた木川さんを訪問したのが最初です。私は石油掘削を研究してきましたが、木川さんのような科学掘削の研究者にお会いして同じ掘削でも考え方はだいぶ違うのだと感じました。

- 木川
- 科学掘削では、あらゆる場所を掘削してコア(サンプル)を集めることを重視しますから、資源を掘り当てることを重視し、掘削しても必ずしもコアを採取しない石油掘削とは違いますね。会議では、科学掘削の研究者と石油掘削の研究者で情報を交換し、お互いの技術がどこに役に立つかわかりました。石油掘削で開発した技術が科学掘削にもたくさん取り入れられています。あのときの情報が今も技術開発に貢献していますよ。
- 増田
- 今、木川さんがプロジェクトリーダーを務める海洋資源プロジェクトは、どんな取り組みをしているのですか?
- 木川
- これまで「ちきゅう」による科学掘削で、沖縄県の海底にある熱水噴出域の下には、熱水鉱床が生成されていると考えられている熱水だまりが湖のように大きく広がっていることを発見しました。また、青森県八戸沖の海底下にメタンガスをつくる微生物が大量に生存する地層があることもわかってきました。こうした資源としての活用に繋がるような海底下の世界の謎を解明する研究や技術開発を進めます。たとえば、巨大な鉱物資源鉱床として有望視されている海底熱水鉱床やコバルトリッチクラストがどうしてできたのかとか、メタンハイドレートが海底でできる環境はどんなものかといったことを研究しています(コラム参照)。
