- 木川
- 「ちきゅう」が「海に浮かぶ研究所」といわれる所以ですね。圧力の高い海底から掘り出したコアの圧力を保ちながら、船上で分析できますし、保存もできます。
- 増田
- 井戸を掘削する東部南海トラフ海域は潮の流れの強いところで、船のオペレーションも難しいところです。
- 木川
- それは「ちきゅう」の強みですね。自動船位保持システム(DPS)で、風や波、潮にも流されずに、同じ場所で掘り続けることができますものね。
- 増田
- MH21プロジェクトはフェーズ2に進んでいます。来年行う海洋産出試験がすぐにメタンハイドレートの資源回収につながるわけではありませんが、今後商業化に向けた開発がいっそう進んでいくと思います。先を見据えて、掘削だけでなく、あらゆる面から海洋資源の仕事ができる人材も育てていきたいですね。
- 木川
- JAMSTECでも科学的な面からメタンハイドレードの研究を進めていきますよ。「ちきゅう」を活用すれば、海底資源の研究の幅も広がります。その中で、石油掘削で培った掘削技術と科学掘削で得た科学的な知見をうまく融合できるしくみができればいいと思います。そうなれば、幅広い人材が必要になりますから、私たちのプロジェクトでも先生が育てた人たちに活躍してほしいですね。今日はありがとうございました。

海底資源は、地球と太陽からの贈り物

「燃える氷」人工メタンハイドレートを燃焼させたもの
出典 メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム
日本の海底下には、天然ガス、メタンハイドレートなどのエネルギー資源や海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊などの鉱物資源が眠っている。エネルギー資源は有機物由来のもので、その源は光合成によってできたもの。まさに、太陽からの贈り物だ。中でもメタンハイドレートは、次世代エネルギーとして期待が高い。一方、鉱物資源は無機物由来のもので、地球の内部からもたらされたもの。こちらは、いわば地球からの贈り物だ。海底熱水鉱床は、海底から噴き出す熱水中に溶解していた金や銀、銅、レアメタルなどの有用な金属成分が沈殿してできた鉱床。コバルトリッチ・マンガンクラストは、海底を覆うように存在する鉄・マンガン酸化物で、コバルトの他にプラチナやレアメタル、レアアースが多く含まれていると考えられている。今年夏には、南東太平洋や中央太平洋にて、見た目は普通の泥にも拘らず高品位のレアアースを含む深海堆積物が報告された。この研究に利用された深海堆積物は、IODPの前身である国際深海掘削計画(ODP)にて採取された試料も含まれる。