研究論文

石垣島沖のわずかな光のみが届く「トワイライトゾーン」と呼ばれる海域から、新種のハゼ科魚類を釣りにより採集しました。特徴的な鰭の模様がバリバリとほとばしる電気を彷彿とさせることから和名を「エレキハゼ」と名付けました。D-ARKの調査地である大東諸島ではありませんが、対象海域の生物多様性を比較する上で貴重なデータとなり、今後の調査にも有益な成果となりました。
Keita Koeda, Hiroshi Hirasaka, Mao Sato (2025) Vanderhorstia supersaiyan sp. nov. (Perciformes: Gobiidae) collected from the twilight zone off Ishigaki-jima Island, Okinawa, Japan, Ichthyological Research, 27 November 2025, 10.1007/s10228-025-01047-6

沖縄県南大東島および北大東島周辺(深度およそ200〜1000m)の海域で八放サンゴ亜綱(Octocorallia) に属するCallogorgia cf. korema、Pleurocorallium inutile、およびクロサンゴ目(Antipatharia) に属する深海サンゴであるAcanthopathes undulataを日本で初めて記録しました。特に、これまで西部および中部太平洋からのみ報告されていたクロサンゴ類 A. undulata が、北西太平洋で初めて確認された点は重要です。
Kurt Bryant B. Bacharo, Kylie Villareal, Hiroki Kise, Asuka Sentoku, Hiroyuki Yokooka, Shinji Tsuchida, Yoshihiro Fujiwara, James Davis Reimer, Records of some deep-sea corals (Antipatharia and Octocorallia) from the Daito Islands, Okinawa, Japan, Marine Biological Association of the United Kingdom, Volume 105, 2025, e127, 10.1017/S0025315425100817
環形動物にはとても多くの種類がいて、そのうち14のグループで発光する生物が知られています。大東諸島の深海で、刺激を与えると緑色に光るヒメエラゴカイ科(Paraonidae)のゴカイを発見しました。このグループで発光を記録したのは世界で初めてです。
Manabu Bessho-Uehara, Naoto Jimi, Yoshihiro Fujiwara (2025) A bioluminescent deep-sea polychaete within the genus Aricidea (Paraonidae) from Minamidaito Island, Japan, Scientific Reports volume 15, Article number: 36573 (2025) , 10.1038/s41598-025-20544-2
海水中から、合成プラスチックに似た物質だけを栄養にして増える細菌を2種類見つけ、その全遺伝情報を調べました。これらの細菌には、プラスチックを直接分解するために知られているアルカン水酸化酵素の遺伝子はありませんでしたが、プラスチックと細菌がどのように関わっているのかを理解する手がかりを与えてくれます。
Ryo Iizuka, Takao Yoshida, Masaru Kawato, Yoshihiro Fujiwara, Sotaro Uemura (2025)Genomic sequences of free-living Pseudoalteromonas species isolated from seawater using an ethylene-α-olefin co-oligomer as a sole carbon source, Microbiol Resour Announc., 10.1128/mra.00785-25

沖縄県大東諸島の深海洞窟の入口付近で、新種のスナギンチャク類 Corallizoanthus aureusを発見しました。航海調査では、無人探査機を駆使して、このスナギンチャクが刺激を受けて深海洞窟内で発光する様子の撮影に成功しました。深海洞窟内で発光現象が確認されたのは、世界で初めてのことです。和名の「ウフアガリ」は、沖縄の古い言葉で「東の涯て」を意味し、「ウフアガリジマ」は大東諸島を指すことにちなみ、「ウフアガリアカサンゴスナギンチャク」と命名しました。
Hiroki Kise, Manabu Bessho-Uehara, Kenta C. F. Kondo, Kiko Shimoji, Shohei Ito, Shinji Tsuchida, Yoshihiro Fujiwara, and James D. Reimer(2025) Glow in the D-ARK: a new bioluminescent species of Corallizoanthus (Anthozoa: Zoantharia: Parazoanthidae) from southern Japan, Royal Society Open Access, Published:05 November 2025, DOI: https://doi.org/10.1098/rsos.250890

沖縄県南大東島沖・水深843メートルで、吸盤のような構造でカイメンに付着して生きる新種のゴカイ「キュウバンフサゴカイ」(Lanice spongicola)を発見しました。通常は泥の中で暮らすフサゴカイ類が、堆積物のない環境に適応し、カイメンとの共生関係を築いていることを初めて確認しました。腹面の吸盤状構造は、ホスト生物(カイメン)への付着を可能にする進化的形質であり、深海生物の生態的多様性や進化の理解に新たな知見をもたらします。
Naoto Jimi, Geminne G. Manzano, Natsumi Hookabe, Hiroki Kise, James Davis Reimer, Sau Pinn Woo, Yoshihiro Fujiwara(2025)New deep sea terebellid polychaete with sucker like ventral pads adapted to a sediment free environment, Sci Rep 15, 36307 (2025), DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-025-23333-z

南大東島の北西、水深843メートルから新種のヒモムシを発見し、 ダイトウキノボリヒモムシ Alvinonemertes daitoensis sp. nov. と命名しました。本種は、六放海綿(ガラス海綿)の一種 スギノキカイメン Walteria leuckartiに体を巻きつけて暮らしています。この行動は他の種にも見られ、別の生き物が同じような環境に合わせて似た姿になったり、似た行動をとったりする「収斂進化(しゅうれんしんか)」の一例と考えられます。和名の「ダイトウキノボリヒモムシ」は、海綿を深海底の「木」に見立て、そこに登って暮らすことから名付けられました。
Natsumi Hookabe, Geminne G. Manzano, Naoto Jimi, Hiroki Kise, James Davis Reimer, Shinji Tsuchida & Yoshihiro Fujiwara (2025) Ribbon worms living on deep-sea trees: Alvinonemertes daitoensis sp. nov. (Nemertea, Monostilifera) associated with the glass sponge Walteria leuckarti (Porifera, Hexactinellida), Systematics and Biodiversity, 23:1, 2504484, DOI:10.1080/14772000.2025.2504484
研究論文

深海性のヤセムツ科魚類 Epigonus glossodontusは、これまでハワイ諸島でのみ採集されたことのある稀種でしたが、沖縄県の大東諸島で本種を多数発見・採集しました。水深340–588メートルの深海で、島の壁面にある“ほら穴”やその周囲に棲息していることから、“ほら穴”のような隠れ家の多い環境を好むようです。また、生時の体色は鮮やかな翡翠色ですが、標本になると暗褐色へ退色することも本研究により新たに判明しました。観察時の特徴から、本種の和名を「ホラアナヒスイヤセムツ」と名付けました。
Mao Sato, Shohei Ito, Yoshihiro Fujiwara, Keita Koeda(2025). “First northwestern Pacific records of the deep-sea cardinalfish Epigonus glossodontus (Teleostei, Epigonidae) from the Daito Islands, Japan” Zookeys 1231:1-10 DOI: 10.3897/zookeys.1231.136445
琉球大学プレスリリース https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/64937/

「Flabelligena属」に属する新種のゴカイ Flabelligena daitoensis を発見しました。このゴカイは、太平洋において初めて記載された種となります。本種は、水深644メートルから774メートルの砂地に生息しています。この属のゴカイはこれまでに、大西洋、地中海、インド洋、そして南極海で7種が記録されていました。
種小名 daitoensis は本種が最初に南大東島で発見されたことに由来しており、和名も「ダイトウヒメクマノアシツキ」と名付けられました。
Naoto Jimi, Natsumi Hookabe, Shoki Shiraki, Hiroyuki Yokooka, Sau Pinn Woo, Shinji Tsuchida, and Yoshihiro Fujiwara (2024). “A New Species of Flabelligena (Annelida: Acrocirridae) from the Western Pacific." Species Diversity, 29(2), 415–421. DOI: 10.12782/specdiv.29.415
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SNS/番組放送
D-ARK 航海 (1) 4月27日: D-ARK 未知の海域への船出
D-ARK 航海 (2) 4月29日: ついに到着!南大東島
D-ARK 航海 (3) 4月30日、5月1日: 2つの水中ロボット始動!
D-ARK 航海 (4) 5月2日、5月3日: MiniROV、ベイトカメラ、釣り採集、CTD採水
D-ARK 航海 (5) 5月4日、5月5日: 内視鏡カメラ、CTD、ベイトカメラ再び
D-ARK 航海 (6) 5月6日、5月7日: 二つの洞窟
D-ARK 航海 (7) 5月8日、5月9日: 釣獲調査と洞窟探査の熱狂
D-ARK 航海 (8) 5月10日、5月11日: 転章D-ARK今年度の調査無事終了、そして九州パラオ海嶺へ
受賞