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海洋地球研究船「みらい」大航海

乗船研究員・船長のご紹介

本航海に臨んで

海洋地球研究船「みらい」船長 赤嶺 正治



昨年の夏、海洋地球研究船「みらい」は、北緯78度54分の北極海で海洋観測を行いました。砕氷船でない船が極地(南極、北極)においてこれまで高い緯度で観測を行うことはたいへん珍しく、日本船では初めてですし、単に氷の海を航行したのではなく、多岐にわたる高精度の海洋観測を実施し多くの貴重なデータを収集したことは、世界的な偉業達成であり、海洋観測史上に残る航海だったと言えます。
その「みらい」も半年後の今、昔から船乗り達に荒れる海として恐れられている、南緯40度から60度の吼える、狂う、叫ぶ海での観測を行っています。この荒れる海のすぐ先には南極大陸(南極半島の北端南緯63度)があります。最近、世界の調査船がこの海での観測に挑戦しましたが、荒れる海で観測を断念しています。今回、「みらい」は、この荒れる海の3地点で水深4,000mの海底の泥を採取することに成功しました。この偉業が世界初になるのかは、大昔の記録がないために確認できませんが、堆積物コアの解析による近代的手法にて高精度の古地磁気データの空白域での試料採取に成功したと言えそうです。
今回の「SORA2009」と名付けられた航海は、今始まったばかりです。今年の7月初旬、日本に帰港するまでの大航海です。この長い航海、さらに海洋観測史上に残るような素晴らしい観測が行われるでしょう。乞うご期待です。

「みらい」には国境はなく、世界の研究者が乗船します。「みらい」で得られた研究成果は日本も含め世界からの乗船研究者により、全世界に発表されます。 2003年8月から2004年2月までの約6ヶ月間、「みらい」が南半球の周航観測を行った際、途中寄港したブラジルのサントス港では、70年前に日本からブラジルに渡ったとおっしゃる多くの日系人の方々が「みらい」の見学に訪れました。地球を救うという立派な仕事をブラジルの研究者と一緒に研究する「みらい」は私たちの誇りであると、拍手で賞賛してくださったことを想い出します。今回も、このブラジルから3名の研究者が乗船しています。
世界に名を馳せる「みらい」の船長を務めることに、誇りと喜びを感じています。そして、「SORA2009」の大航海を無事に完遂させ、観測研究を成功させるという重責も感じています。7月初旬、世界が注目する貴重な観測データを満載して帰国できるよう、安全運航と研究支援に全力を注いで参りたいと思います。


今回のミッションは、チリ国のご協力の下、実施されています。チリ経済水域および領海での観測のため、途中、チリ沿岸のレイテック(LAITEC)沖にてチリオブザーバー1名、パイロット2名(チリ海軍OB)が乗船しました。そして、付近の船舶への注意喚起、チリ海軍運用の灯台への通報、最新気象予報の入手、船長および首席研究者への航海・観測に関する必要なアドバイス提供などを積極的に行っています。船橋にて左から船長、オブザーバー、首席パイロット(元海軍大将)



乗組員の交代、補油などのため、寄港したタヒチ島パペーテにて


チリ・バルパライソ港にて