首席研究者

阿部 なつ江(あべ なつえ)
理学博士
独立行政法人海洋研究開発機構
地球内部変動研究センター・研究員
●目的
南東太平洋における海洋底観測により、地球内部のコア(外核)の変動を解析し、マントル深部からの上昇流(プルーム)のイメージングを行う。さらにチリ沖において、海洋プレート形成現場である中央海嶺とその中央海嶺が大陸下へ沈み込む現場を観測することにより、海洋プレートおよび大陸地殻形成プロセスの解明をめざす。またチリ沖では、近年日本近海で発見された新しいタイプの火山「プチスポット」の調査も兼ねている。

原田 尚美(はらだ なおみ)
理学博士
独立行政法人海洋研究開発機構
地球環境観測研究センター・サブリーダー
●目的
過去において北半球では、数十年から数百年スケールで変動するダンスガード - オシュガーサイクル(D-O サイクル)と呼ばれる急激な気候変動が確認されている。この温暖―寒冷変動の実態を明らかにすることは、将来の温暖化後の環境変化を推測する上で重要な研究テーマである。氷床コアによると、北半球と南半球では、D-O サイクルがシーソーのように北が寒冷化しているとき、南では温暖化していたと推測されているが、D-O サイクルに連動して南半球の海洋環境がどう応答して来たのかわかっていない。そこで、チリ沖において海底堆積物を採取し、南半球ではD-Oサイクルに伴ってどのように気候変動が生じていたのか調査することを目的とする。
海洋地球研究船「みらい」船長

赤嶺 正治(あかみね まさはる)
工学博士
●本航海に臨んで
昨年の夏、海洋地球研究船「みらい」は、北緯78度54分の北極海で海洋観測を行いました。砕氷船でない船が極地(南極、北極)においてこれまで高い緯度で観測を行うことはたいへん珍しく、日本船では初めてですし、単に氷の海を航行したのではなく、多岐にわたる高精度の海洋観測を実施し多くの貴重なデータを収集したことは、世界的な偉業達成であり、海洋観測史上に残る航海だったと言えます。
その「みらい」も半年後の今、昔から船乗り達に荒れる海として恐れられている、南緯40度から60度の吼える、狂う、叫ぶ海での観測を行っています。この荒れる海のすぐ先には南極大陸(南極半島の北端南緯63度)があります。最近、世界の調査船がこの海での観測に挑戦しましたが、荒れる海で観測を断念しています。今回、「みらい」は、この荒れる海の3地点で水深4000mの海底の泥を採取することに成功しました。この偉業が世界初になるのかは、大昔の記録がないために確認できませんが、堆積物コアの解析による近代的手法にて高精度の古地磁気データの空白域での試料採取に成功したと言えそうです。
今回の「SORA2009」と名付けられた航海は、今始まったばかりです。今年の7月初旬、日本に帰港するまでの大航海です。この長い航海、さらに海洋観測史上に残るような素晴らしい観測が行われるでしょう。乞うご期待です。
「みらい」には国境はなく、世界の研究者が乗船します。「みらい」で得られた研究成果は日本も含め世界からの乗船研究者により、全世界に発表されます。
2003年8月から2004年2月までの約6ヶ月間、「みらい」が南半球の周航観測を行った際、途中寄港したブラジルのサントス港では、70年前に日本からブラジルに渡ったとおっしゃる多くの日系人の方々が「みらい」の見学に訪れました。地球を救うという立派な仕事をブラジルの研究者と一緒に研究する「みらい」は私たちの誇りであると、拍手で賞賛してくださったことを想い出します。今回も、このブラジルから3名の研究者が乗船しています。
世界に名を馳せる「みらい」の船長を務めることに、誇りと喜びを感じています。そして、「SORA2009」の大航海を無事に完遂させ、観測研究を成功させるという重責も感じています。7月初旬、世界が注目する貴重な観測データを満載して帰国できるよう、安全運航と研究支援に全力を注いで参りたいと思います。
昭和42年 | 日本郵船株式会社入社 被命三等航海士 |
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昭和48年 | 被命二等航海士 |
昭和55年 | 被命一等航海士 |
昭和56〜60年 | 人事院が研究機関として指定する運輸省(現在国交省)認可中央法人日本海難防止協会に日本郵船(株)から出向し、主任研究員として、海上交通、操船、水先制度などの調査研究に従事。この間、東京商船大学(現東京海洋大学)で研究員として船の操縦性を学ぶ。 |
昭和61〜62年 | SECOJを通じ、日本政府が技術供与したモロッコ冷凍船に乗船し、モロッコ船員教育に従事。 |
昭62〜平成6年 | 日本郵船(株)技術部門の水路担当として、海洋、港湾、気象・海象などを調査(世界の海、港湾に出張)。並びに船舶の安全効率運航を目的とした最適航路選定業務(航空会社のディパッチャーのような業務)に従事。海上保安庁水路部(現在海洋情報部)、日本水路協会主催の委員会などの委員を歴任。 |
平成元〜5年 | 日本・ロシア海運協議に基づく日ロフェリー開設のための港湾調査(沿海州、サハリン、オフォーツク海など)に専門家として参画。 |
平成2年 | 被命船長 |
平成2〜3年 | 日本船主協会などが主催する北極海航路開設検討会に専門家として参画。 |
平成5年 | 日本郵船(株)より当時の運輸省外航課に出向し、国連の専門機関である、IMO(国際海事機関)のマラッカ海峡航行安全専門家委員会に日本政府代表として参画。 |
平成6〜7年 | 欧州域のコスト管理、代理店指導のため、長期出張(イタリアミラノ駐在)。 |
平成7年 | 日本郵船(株)より(株)グローバルオーシャンディベロップメントに出向し、大型海洋観測研究船運用技術要員長(艤装船長)としてJAMSTEC本部に赴任。 |
平成9年 | 海洋地球研究船「みらい」初代船長に就任。現在に至る。 |