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2014年3月31日発表
プレートを動かす正体は、いったいなに?
マントルの流れにその証拠 を発見!
ニュースなどで、「地震が起きるのは、プレートが動いているから」って耳にしたことはあるかな? 地震だけではなく、火山活動や大陸移動も、プレートが動くことが原因です。では、そのプレートはどうして動くの? その疑問の答えとなる証拠を、このたび、小平秀一博士が世界で初めて発見しました。ダイナミックな地球の動きの研究最前線をお届けします!
![プレートってなに?](img/q_and_a_01.jpg)
プレートとは、地球の表面をおおう10数枚の、厚さ100qほどのかたい岩板です(図1)
![図1 プレート](img/fig1.jpg)
図1プレート
それぞれがゆっくり動き、プレート同士の境目では、衝突したり片方の下にもう一方が沈 みこんだりして、地震や火山活動などの原因となります。特に日本周辺には4つのプレート(太平洋プレート、北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレート)があるので、プレートについてはよく知ることが必要です。
でも、プレートはなぜ動くの? これまでに、「沈みこむプレートの重みが、残りのプレートを引っぱる」説と、「マントルが流れて、上にあるプレートを動かす」説がありました(図2)。でも、どちらも確かな証拠は見つかっていませんでした。
![プレートを動かすのはなに?](img/fig2.jpg)
図2 プレートを動かすのはなに?
それを明らかにするために小平博士が注目したのが、北海道南東沖の海底です。
![なぜ北海道南東沖なの](img/q_and_a_03.jpg)
北海道南東約200〜700q沖の海底には、約1億2千万年前に存在した中央海嶺という場所で作られたプレートが残っているのです( 図3)。
![北海道南東沖の今と1億2300万年前](img/fig3.jpg)
図3 北海道南東沖
このプレートを直接調べれば、当時の様子が見えてくるはず。小平博士は、2009年6月と2010年7月、深海調査船「かいれい」による調査を行いました。
![結果はどうだったの?](img/q_and_a_05.jpg)
「かいれい」から 人工地震波を海底に向かって発し、その伝わり方やスピードから海底下の構造や物質などを調べました。その結果、まず、地震波の伝わるスピードは、東西方向では秒速約7.8q、南北方向では秒速約8.6qと、方位により8.5〜9.8%のちがいがありました( 図4)。
![屈折法地震探査の結果](img/fig4.jpg)
図4 屈折法地震探査の結果
マントルに多くふくまれるかんらん石は1,000℃以上で流れると、その方向に結晶がそろいます(図5)。その方向に沿って地震波が伝わればスピードは速くなりますが、直交方向に伝わればスピードは遅くなります。だから、方位により地震波のスピードがちがうことは、すなわちマントルが流れる事実を示します。
![地震波の伝わるスピードが方位により変わるイメージ](img/fig5.jpg)
図5 地震波の伝わるスピードが方位により変わるイメージ
また、約25qおきにあるたくさんのすじを発見しました(図6)。それも、かつての中央海嶺の方向にむかっています。
![反射法地震探査の結果](img/fig6.jpg)
図6 反射法地震探査の結果
これはリーデルせん断だと考えられます。リーデルせん断とは、ある幅をもつものが挟 まれて左右にずらされていくとだんだん変形して、こわれてできるせん断面です(図7)。そのせん断面の方向は、引っぱったものを下側にして見た時に、進行方向に対して上向きになることがわかっています。
![リーデルせん断のでき方](img/fig7.jpg)
図7 リーデルせん断のでき方
ならばリーデルせん断の方向から、プレートを動かすのが「しずむプレートの重み」か「下のマントルの動き」なのか探れるはず。小平博士は、両方のケースでできるリーデルせん断を考え、調査結果と比べました。ここからは文章より図の方がわかりやすいので、図8を見てね。
![D2つのケースでできるリーデルせん断を考えて考えて…これだ!](img/fig8.jpg)
図8 2つのケースでできるリーデルせん断を考えて考えて…これだ!
このことから、今回発見したリーデルせん断は、マントルが引っぱった場合にできたものと考えられます。さらに、このリーデルせん断の下が、先ほどの方位による地震波のスピードの違いがハッキリある場所なのです。まさに、プレートを動かす原動力はマントルであることを後押し!
![今後はどうするの?](img/q_and_a_07.jpg)
これらの調査結果から、少なくとも北海道南東沖でプレートができた時には、マントルがプレートを動かしていたと考えられます(図9)。
![今回の結果のまとめ](img/fig9.jpg)
図9 今回の結果のまとめ
他の場所でも同じ現象が起きているのか知るため、2014年6月、小平博士は太平洋プレートの中央に位置するハワイ周辺で調査をする予定です。小平博士は「将来的には、地球深部探査船「ちきゅう」でマントルそのものを掘り出したい。マントルにふくまれるかんらん石の結晶を調べれば、今回の成果を確かめられるはず」と話します。
![おまけ](img/q_and_a_08.jpg)
調査を行ったのは2009年と2010年で、実はこの研究は2、3年前に発表する予定だったようです。しかし2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生。小平博士は、「すべての力をこの地震に関する研究に注ぎました」と振り返ります。そして2年以上がたちようやくこの研究に着手、このたび発表に至りました。様々な思いのつまった研究成果です。
小平博士は、「研究でやりがいを感じるのは、意外な発見があった時。今回の研究も、実は別の第一目的があって、それを調べていました。でもデータにふしぎな点がたくさんあって、どう考えたらいいのか調べていたら、この結果につながりました。」だから読者のみんなには、「わかっている気持ちになることは多いけれど、色々調べていくとそうじゃないこともたくさんあります。わかったつもりになってはいけません」と話します。みなさん、がんばってくださいね!