プログラム・講演要旨

13:00~13:20 開会挨拶・趣旨説明 -講演会の聴きどころ-
原田 尚美 
海洋研究開発機構 地球環境部門 地球表層システム研究センター

13:20~13:50 海の恵み:栄養塩-データが明らかにする海の変化-
安中 さやか 
海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋観測研究センター 研究員

栄養塩(えいようえん)は、植物プランクトンが光合成するときに必須の要素で、海の食物連鎖を根底から支える物質(塩類)です。近年、観測データの蓄積と公開が進み、栄養塩の分布や時間変動が捉えられるようになってきました。栄養塩濃度は、海域によって様々で、季節変化の様子も異なります。海洋表層の栄養塩は、植物プランクトンが盛んに繁殖する冬から夏にかけて減少しますが、その減少幅は、植物プランクトンがどのくらい栄養塩を消費するかによります。また、地球温暖化に伴う変化も見出されています。海の豊かな生態系を守っていくためにも、栄養塩変化の監視を続けていく必要があります。
13:50~14:20 地球温暖化により海洋生態系はどう変わるのか?~2100年の海を予測する~
橋岡 豪人 
海洋研究開発機構 地球環境部門 地球表層システム研究センター 研究員

地球温暖化に伴い、海洋では様々な環境の変化が報告されています。例えば、海水温の上昇や、海洋循環の変化、日照環境の変化、さらには海洋の酸性化など。そのような中、海洋に住む生物(微小な植物プランクトン、動物プランクトンから魚まで)は、環境変化にどのように応答し、2100年にはどうなってしまうのでしょうか?現在、各国の研究機関において数値シミュレーションによる予測が行われています。この講演会では、そもそも海洋生態系を予測するとはどういうことなのか?また、これまでの研究から明らかになってきたことをご紹介し、生態系の変化が私達の生活にどのような影響を与えうるのか考えてみたいと思います。
14:20~14:30 休憩
14:30~15:00 科学が予測するマイワシの未来
西川 悠 
海洋研究開発機構 付加価値情報創生部門 情報エンジニアリングプログラム 研究員

安くて美味しいマイワシ。焼き魚や煮干しとして人間に食べられるだけでなく、フィッシュミールなどに加工され、畜産や養殖にも欠かせない重要な魚です。マイワシといえば、なんだか網にザバザバと入ってたくさん獲れるというイメージもあるのではないでしょうか。実際マイワシ最盛期には、日本の漁獲量の40%がマイワシでした。ところが実は、マイワシの漁獲量は数十年周期で100倍以上変わるのです。といっても所詮いわゆる大衆魚、低迷期にあっても皆さんの食卓から完全に消えたわけではないので、漁獲量が大変動していることには気づきにくいかもしれません。今回は、このマイワシ大変動とその背景についてお話したいと思います。
15:00~15:30 人にも海にも優しい漁船漁業を目指して
高尾 芳三 
水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産工学部長

私たちは、豊かな生態系や環境を守りながら漁業を続けるための「人にも海にも優しい」漁業技術を研究しています。例えば、漁船では燃料油を使いますが、この使用量を減らす省エネルギー技術は、経費削減になるとともに温室効果ガスであるCO₂の排出量も減らすことができます。海洋科学の進歩により、洋上でも風や波、流れの詳細な予報を受け取れるようになってきました。これらを利用して安全かつ省エネルギーに漁港と漁場を往復する技術、獲りたい魚を必要なだけ獲るための計測技術、再生可能エネルギーを利用する漁船などの取り組みについてご紹介します。
15:30~16:00 “母なる海”の価値を可視化する:住民参加型海洋生態系サービス評価研究の紹介
杉本 あおい 
水産研究・教育機構 水産資源研究所 水産資源研究センター 研究員

皆さんにとっての「海の大切な価値」とは何ですか?-海を含め、自然環境を管理したり、保全したりするためには、まずはその価値を適切に評価し、管理や保全にかかる費用と便益のバランスを取る必要があります。国内外の政策決定者、研究者、NGO等はこの「自然の価値評価」をどうしたら適切に行うことができ、また効果的な管理・保全に結び付けることができるかを長年議論していますが、近年その議論が大きく進んでいます。それはいわば、「オカネなどといった数字では表せない大切さ」をしっかり評価し、その価値をしっかり保全に結び付けていこうとする意志を持った議論です。この発表では、美しいサンゴ礁の海を有する沖縄県石垣島の人々にとっての「海の大切な価値」を抽出・可視化した研究についてご紹介します。「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(UN Ocean Decade)」が一人一人にとって多種多様な「海の大切さ」を守ることのできる10年となれるためにどんなことが必要か、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
16:00~16:25 ディスカッションコーナー
講演者
16:25~16:30 講演会のまとめ
海洋研究開発機構 地球環境部門 地球表層システム研究センター長 原田 尚美