極端現象 ―豪雨をもたらすもの―

プログラム

13:00~13:20 開会挨拶・趣旨説明-講演会の聴きどころ-
米山 邦夫
海洋研究開発機構 地球環境部門 
大気海洋相互作用研究センター
13:20~13:50 春と夏のあいだに~梅雨の雨が長続きする理由~
茂木 耕作
海洋研究開発機構 地球環境部門 
大気海洋相互作用研究センター
副主任研究員

一般的な亜熱帯地域での「雨季」は、雨が続きやすい理由がシンプルです。雨季と乾季が対になる理由も、雨季に雨が長く続きやすい理由も、季節風の向きで概ね説明されます。
ところが日本の雨季である「梅雨」は、乾季の対としての季節ではなく、「他の季節よりも雨が長く続きやすい時期」という意味での雨季です。さらに梅雨の長雨の理由は、日頃の天気予報でも単純な風の向きだけでは説明されません。
そこで「雨が長く続く理由」の説明でよく用いられる「梅雨前線の停滞」と「暖かく湿った南風」について、1つずつ立ち返っていきましょう。
13:50~14:20 集中豪雨をもたらす線状降水帯とは
加藤 輝之
気象庁気象研究所 台風・災害気象研究部
部長

日本では3時間降水量200mmを超えるような集中豪雨がしばしば観測され、地滑りや洪水といった災害を引き起こします。そのうち、およそ半分(台風本体によるものを除けば3分の2)が「線状降水帯」によってもたらされています。本講演では、大雨をもたらす積乱雲の発生条件の説明から始め、「線状降水帯」という用語の由来から発生メカニズム(バックビルディング型形成)、数値モデルによる予測可能性について解説するとともに、平成29年7月九州北部豪雨、令和2年7月豪雨、令和3年8月の大雨時における線状降水帯の寄与を比較してみます。
14:20~14:50 川が空に飛んでいる~大気の川の過去・現在・未来~
趙 寧
海洋研究開発機構 地球環境部門 
大気海洋相互作用研究センター
研究員

「大気の川」は大量な水蒸気が一時的に細長い形で流れ込む現象です。日本では、大気の川が主に暖候期に発生し、豪雨をもたらすことが多いです。これまでの研究によると、大気の川が極端現象に繋がっている一方で、熱帯から中・高緯度へ水蒸気を輸送することで、地球の水循環にも大きく貢献しています。本講演では、大気の川の由来、概況、世界及び日本に対する影響、そして地球温暖化による変化について紹介します。最後には、大気の川の理解に対してよく勘違いしやすいところや大気の川に対する研究の現状も紹介します。
14:50~15:00 休憩
15:00~15:30 台風の数値シミュレーション最前線~気候変動から近年の事例まで~
那須野 智江
海洋研究開発機構 地球環境部門 
環境変動予測研究センター
グループリーダー

台風の発生頻度や強度は、地球の自然変動や温暖化の影響を受けて変化しています。最新の気候変動シミュレーションの国際比較プロジェクトでは、台風に伴う降水や強い台風の発生割合の増加が予測されています。台風は、熱帯の海洋上で発生・発達するため、海面水温の変動は台風の変化を決める重要な要素です。また、台風は大気の川や梅雨前線に伴う降水にも、様々な形で影響を及ぼします。本講演では、台風の構造や発生数の将来変化や、近年の事例について台風に対する海面水温の変動の影響に関する研究成果を紹介します。
15:30~16:00 タイフーンショット計画~2050年、台風を脅威から恵に~
筆保 弘徳
横浜国立大学 先端科学高等研究院 
台風科学技術研究センター長

毎年日本に大きな傷跡を残す台風は、地球温暖化に伴いその勢力はさらに増すという予測がされています。この台風の脅威に対抗するためには防災インフラのさらなる強化が必要ですが、莫大なコストがかかります。そこで講演者らは、台風を人為的に勢力を調節し、さらには制御した台風エネルギーの利活用(台風発電)まで挑戦する「タイフーンショット計画」を提案しています。また、2021年に横浜国立大学先端科学高等研究院に設立された日本で初めての台風専門研究機関となる「台風科学技術研究センター」についても紹介します。
16:00~16:25 ディスカッションコーナー
講演者
16:25~16:30 講演会のまとめ
海洋研究開発機構 地球環境部門 大気海洋相互作用研究センター長 
米山 邦夫