潜ってくるZ!編

2013/02/09

川口 慎介(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

【おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえてるのか?】
ワタクシ,今このレポートを,午前5時に書いております。というのも,このままいけば今日は,ワタクシの10000日を超える人生で2度目の「しんかい6500」潜航を行うことになっておりまして,潜航前のこの率直な想いを漏らさず記しておこうと,そう考えてキーボードを叩いている次第です。

ちなみに現在,ワタクシは今からはじまる潜航にまったく乗り気ではありません。皆さまにおかれましては「ご冗談を」あるいは「てめーは俺を怒らせた」と思われるかもしれませんが,これは冗談抜きで率直にそう思っています。というのもワタクシ,ちまたでは片手で10円玉を曲げたとか素手で牛を殺したとか噂されているものの,その実態はと言いますと,滅入っている時はエレベーターに乗るのにも緊張するほどの閉所恐怖症で,ちょっと電車に乗るのも不安になるほどにトイレが近く,指一本動かすのも億劫なほどの極度の面倒くさがりなのです。
そんなわけで「しんかい6500」の耐圧殻に8時間も閉じ込められて海底で休み無く数多の任務をこなすなんてことを想像するだけで,もうグッタリしてしまうわけです。正直なところ,西澤首席から潜航の命を受けた際には「だが断る」と言ってしまいそうになりました。

とはいえ潜航はもうすぐですから,今は「ももクロ」のDVDを見て気持ちを奮い立たせつつ,コーヒーを飲んで便通を促しています。この後,シャワーを浴び,朝ご飯を食べ,ペイロードのチェックをし,潜航プランの最終確認をして,9時過ぎには「しんかい6500」に乗り込みむ予定です。潜航を終えて戻ってきた後は試料処理に追われる予定なので,潜航自体の感想は明日のレポートを待たれたし。


写真1:2009年の潜航ではドードーでの熱水域「発見」が目的でした。


写真2:今回の潜航ではSolitaire Field(ソリティア熱水域)の調査が目的です。