初潜航

2013/05/12

滋野 修一(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

朝食を終えて時間は8時20分。我らが首席が「しんかい6500」に乗り込みます。海の色はマリンブルー。透明な青い波がゆらゆらと船に打ち寄せます。おだやかな風と波、そしてほどよい日の光。気温は丁度熱くも寒くもない快適さ。経験のないブラジル人6名は自分たちが搭乗しないにもかかわらずかなり興奮気味です。あたかも報道カメラマンのように船尾のベストポジションを陣取り、「しんかい6500」が着水して潜航する勇姿を見届けます。

―ブラジル沖の海底。「しんかい6500」から送られてくる映像を見た限りではイメージが随分違いました。油田域というと茶褐色の濁った泥底を想像しましたが、透明度はかなり高くて美しい。周りは岩石か明るいクリーム色の硬い粘土層なためか一見「砂漠」を連想しました。観察される動物もかなり少なめ。そのため私たちが発見を熱望している生命の群集が本当に見つかるのか不安がよぎります。砂漠のなかに生命のオアシスは果たして今回見つかったのか?それとも自然は容赦なく「そう簡単にはいかない」と難題を突きつけたのか?何れにしても挑戦は始まったばかりです。


写真:夕日を背後に帰還する「しんかい6500」。


写真:ミーティング風景。潜行中の前後に入念に行われます。