1373潜航・熱水まであとちょっと。しかし思いは熱水より熱し!!

2013/10/27

YK13-11 首席研究者 土田真二(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

10月27日、北部ケルマディック島弧Hinepuia火山への潜航を実施!
潜航2日目です。昨日26日は、地球の内部に沈みつつあるカノパス海山の調査でしたが、本日は沈み込みを受けるプレート側で活発に活動する火山の一つに潜航しました。消えゆく側の海山、一方で活発に活動する海底火山、ケルマディック海溝をはさんだこの2つの生態系の違いの解明が、既出のレポートのとおり、今調査航海の焦点になっています。潜航者は、今研究航海の首席をつとめるJAMSTECの土田さんです。

土田さんは「しんかい6500」や「ハイパードルフィン」その他の深海調査システムを駆使して、世界中の熱水噴出域に生息する生物の調査を行っている研究者です。特に目のないカニには"目がありません"と、どんなに深い海であってもオヤジギャグが平気で言えるほど経験を重ねたベテランです。ギャグはいまひとつですが、写真撮影はプロ並の腕前です。昨日のクラーク博士の潜航レポートに添付した採取サンプルの写真も、まるで図鑑からもってきたように美しいものですが、サンプル採取後に「よこすか」船内のラボで土田さんが撮影したものです。今回のものも是非ご覧下さい。

これまでの地形情報や化学成分の調査から、Hinepuia海山の南東に広がる頂上に活発な熱水活動が存在することが示唆されています。今回(潜航1373)はこのポイントに潜航し、熱水噴出孔と、それに伴う生物群集を発見することを目的に、海山の斜面、水深約800m地点に着底し、頂上に向かって航走しました。

海底には、思いのほか多種多様な魚類、エビ、コシオリエビなどの生物を確認しました。頂上付近では、熱水性と思われる変色域を確認し、いざ頂上付近に向かおうとしたところ、海況が悪くなってきたということで、急遽、支援母船の「よこすか」から呼び出され、やむなく潜航を中断して浮上しました。

熱水発見まで、もうあと一歩のところまできたのですが、海上の気象には勝てず、とても残念な結果となってしまいました。しかし、残された時間を有効に活用し、再度チャレンジして熱水発見を目指そうと思います。

なお今晩、丑三つ時に、土田首席は、船のブリッジに"金刀比羅さん参り"だそうです。

(注)ちなみに海底火山の名前の「Hinepuia」は、マオリ族の言葉で溶岩(あるいはマグマ)の神を意味するそうです。この航海に同行しているGNSのDr. Cornel de Rondeさんが、マオリ族の酋長からヒントをもらい、この山の名前をつけた(本人談によると公式)ということです。

火山の神に祈るため、日本の海の守り神を深夜にもかかわらず、南太平洋まで呼び出そうとする土田首席祈祷師の執念が実ることを期待したいと思います。そういえば今回の潜航・1373も「イザナミ」ともよめますね。


写真1 1373潜航中、観察・撮影を行ったオオエンコウガニ類のペア。上にいるのがオス、下にいるのがメス。オスは、けなげにもメスが脱皮するのをしっかりと守っている。


写真2 1373潜航で採集したコシオリエビの一種。 左は海底で採集する前に「しんかい6500」から撮影したもの。左上に白く見えるものは、サンゴの仲間。右は水槽内で撮影した写真。


写真3 潜航直後、ニュージーランドの研究者たちに囲まれる土田首席研究員