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数理科学・先端技術研究開発センター(MAT)

セミナーのお知らせ

[第6回 横串セミナー]

開催日時:
2014年11月13日(木) 15:00-16:00
開催場所:
横浜研究所 地球情報館 2F セミナー室
使用言語:
日本語
講演者:
河村洋史 (数理科学・先端技術研究分野)
タイトル:
振動対流の同期現象に対する位相縮約によるアプローチ
ーテレコネクションの理解に向けた数理的な試みー
概要:
地球の大気大循環の形成における極・赤道間の温度差および自転の効果を体系的に調べるための模型実験として回転水槽実験が知られている。この実験系は Rossby regimeにおいて amplitude vacillation と呼ばれる進行振動対流パターンを示す。近年、テレコネクションの理解に向けた試みのひとつとして、この 回転水槽を2つ用意し、それらを熱的に結合させた系における、2つの進行振動対流の間の同期現象が研究されている (Castrejon-Pita and Read, 2010)。ここで、回転水槽は回転方向に連続並進対称性を持つため、回転水槽における進行振動対流は「空間に関する連続並進対称性の自発的な破れ」と「時間に関する連続並進対称性の自発的な破れ」という2つの「位相」を持つリミット・トーラス解によって記述される。このような進行振動対流の同期現象に対する数理的な理解とその地球流体への応用を目指し、本研究(arXiv:1404.5403)においては、その第一歩として、シリンダー形状の Hele-Shawセルにおける振動対流を考える。この系は水平方向に連続並進対称性を持つため、この系における振 動対流も「空間位相」と「時間位相」を持つリミット・トーラス解によって記述される。この振動対流のダイナミクスを位相変数のみで記述する「位相縮約法」を定式化し、結合した2つの振動対流の間の空間的・時間的な位相同期現象を解析する。

[第4回 横串セミナー]

開催日時:
2014年9月18日(木)15:00-16:00
開催場所:
情報技術棟5階大会議室
使用言語:
日本語
講演者:
山口 哲生(九州大学大学院工学研究院機械工学部門・准教授)
タイトル:
ゲルの摩擦動力学
概要:
やわらかい弾性体を硬い基板に接触させ、接触面に沿って摩擦させると、しばしば時空間的に不均一なスティック-スリップ運動が現れる。我々は、ゲル(溶媒を大量に含む高分子材料で、弾性率はKPa~100KPa程度)を一定速度で駆動することで、ある速度を境に、周期的な振る舞いから不規則な振る舞いへと分岐することを見出した。また、すべりの規模に対する頻度分布を調べたところ、べき分布(地震におけるグーテンベルグ-リヒター則)を示し、その傾き(b値に対応)は駆動速度に伴って変化することがわかった。さらに、接触面に与える法線応力の大きさや勾配を変化させたところ、頻度分布の形状が大きく変化することがわかった。本講演では、弾性体の摩擦実験の概略を述べた後、地震現象への応用を意図した、ゲルの摩擦動力学に対する実験的・理論的アプローチについて説明を行なう。もし時間があれば、形状・大きさ・間隔が精密に制御されたアスペリティをもつゲル同士の摩擦実験における、ゆっくりすべり・高速破壊現象についても紹介する予定である。

[第2回 横串セミナー]

開催日時:
2014年5月27日(火)14:00-15:00
開催場所:
シミュレータ研究棟1F大会議室
使用言語:
日本語
講演者:
秦 重史 (数理科学・先端技術研究分野 研究員)
タイトル:
反応拡散ネットワーク理論に基づいた生態系モデルの安定性解析
概要:
反応因子が拡散的に移動することで、さまざまな時空間パターンが形成される ことが知られている。この「反応拡散系」と呼ばれる数理モデルは生物の形態形成、 生態系における生物種の捕食・被捕食ダイナミクス、交通網を介した感染症の 拡大などを記述する手段として、様々な分野で重宝されている。反応拡散系は これまで連続媒質上において精力的に研究されてきたが、近年、媒質の構造が 系のダイナミクスに大きな影響を与えることが明らかになった。特に、実世界に 「複雑ネットワーク」と呼ばれる媒質構造が普遍的に存在することが報告されて 以来、ネットワーク上における反応拡散系の研究が盛んに行われている。この 「反応拡散ネットワーク」は一般の構造を持つ媒質上における自己組織化現象を 記述する理論基盤であり、多様な応用の可能性から大きな注目を浴びつつある。 本セミナーでは、上記、反応拡散ネットワークに関する先行研究のレビューを 行うとともに、講演者の最近の研究結果を報告する。特に、生態系モデルに焦点を 絞り、振動性チューリング不安定化に伴う生物種の絶滅について解説する。