4月27日から5月19日まで、南大東島周辺海域で調査を行いました。
Report vol. 2では、本プロジェクトで開発中の「深海内視鏡」と「Mini ROV」について紹介しましたが、今回はその2つの機器を使って発見することができた生物をご紹介していきます。
潜航調査は長い場合、一回8時間にも及びます。
Mini ROVと深海内視鏡で撮影した映像はリアルタイムで母船「かいめい」に送信されます。
D-ARKの調査ではさまざまな生物の専門家が参加しており、交代でひたすら映像を見続けます。生物を発見すると、水深や水温といった生息環境に関する情報を記録しつつ、生態学的特徴を観察し、意見交換をしながら何の生物なのか同定・記録していきます。
今回ご紹介する生物の一部は、D-ARKプロジェクトのキーメンバーである新江ノ島水族館で展示されています!
最新の飼育状況については水族館のHP「新しい生き物たち」のページをチェックしてみてくださいね。
今回の調査で最も多く確認した生物の一つはこのウデボソヒトデ目の一種です。
ウデボソヒトデの仲間の特徴は放射状に広がる細い腕です。深海洞窟の入り口付近に無数にへばりつき、ゆらゆらと腕を広げてエサを待ち構えていました。
採集した個体については船上で解剖し、胃内容物を観察したり、発光する能力があるかどうかの確認を行いました。
深海用内視鏡を試すにはうってつけの横穴を発見し、深海内視鏡を使って中を覗くとゴツゴツした横顔の深海魚の姿が映し出されました。「新種の怪魚?」と一瞬、息を呑みましたが、そこにはヒウチダイの一種が隠れていました。
かなり大きな魚に見えますが、小さな穴の中ということをお忘れなく!全長でおよそ7〜8 cm程度でしょうか。
沼津沖などの深海底曳き網漁で獲られるヒウチダイやハシキンメは食用として好まれています。
シマツノコシオリエビと推定する個体です。名前にエビがつき、カニのような見た目、しかしヤドカリの仲間です。和名の「シマ」は、「縞模様の脚」を表しています。 コシオリエビ類は小型の種が多く、今回採集した個体は全長4 cmです。
多くのコブシガニは砂泥底に生息することが知られていますが、このコブシガニは石灰岩の壁面から見つかりました。
甲羅が半球状でハサミ脚が大きくてずんぐりむっくり、カニなのに前に歩くというちょっと変わりものです。
厳つい見た目に反して3 cmほどの個体です。Mini ROVに装備したスラープガンで採集しました。
セミエビ科には50cmにもなるような大きな種類までいますが、今回採集したのは3 cmほど。可愛いサイズでカラフルなヒメセミエビの仲間です。
他のセミエビと同様に扁平な甲に覆われており、小さな体でもがっしりとしています。
一般的に、ヒメセミエビの仲間は夜行性で昼間は岩場に隠れ、夜になると活発に動き出します。
スナギンチャクはサンゴなどと同じ刺胞動物です。サンゴのように骨格を作らない代わりに体に砂粒を埋め込む特徴を持つ種類が多いことから、この名前が付けられました。外見はイソギンチャクに似ていますが、体の構造は全く異なります。
スナギンチャク類の多くは他の海洋生物と共生することが知られています。このアカサンゴスナギンチャク属の一種はダメサンゴの仲間の骨格を使って大きな群体を作っていました。
今回発見した多くの生物は、まだ種の同定に至っておりません。
現在、採集することができた生物サンプルの分析を進めています。
続報をお待ちください!