活動報告
Report vol.5「深海展」開催!研究プロジェクトにおける水族館の役割とは?
D-ARKプロジェクトの強みは、様々な分野の第一線で活躍する専門家が参加していることです。
キーメンバーの一人である八巻さんが所属する新江ノ島水族館は、目の前が相模湾という立地を活かし、長年に渡って深海生物の研究・飼育に取り組んできました。
本プロジェクトでもその経験と技術を活かして、調査で採集してきた生物の飼育実験や一般向けの展示、アウトリーチ活動を担当しています。
新江ノ島水族館にて「深海展」が好評開催中!
D-ARKプロジェクトの特設展示コーナー
新江ノ島水族館にて2024年12月28日から2025年4月6日まで、企画展「えのすいの深海展〜ディープ度200%〜」が開催されています。
開催期間中、館内にはD-ARKプロジェクトの特設展示コーナーが設置され、調査で採集した生物の展示やプロジェクトの紹介パネルの展示、調査風景・発見した生物の動画の放映が行われています。
2025年2月2日、3月2日にはD-ARKメンバーによる閉館後イベントも開催されます。
詳しくは「えのすいの深海展〜ディープ度200%〜」の特設WEBページをご覧ください。
https://www.enosui.com/evententry.php?eid=02470
探査機器のモックアップを展示
さらに、深海洞窟調査のために開発中の探査機器「深海内視鏡」と「水中ドローン」の名称を募集しています。
詳しくは新江ノ島水族館のWEBサイトをご覧ください。
https://www.enosui.com/evententry.php?eid=02487
新江ノ島水族館、八巻トリーターにインタビュー
八巻トリーター
(トリーターとは、生物を飼育(treat)し、お客さまをおもてなし(treat)する、
新江ノ島水族館=えのすいの展示飼育スタッフの呼称です。)
- D-ARKプロジェクトに八巻さんが参加することになった経緯を教えてください。
- 八巻トリーター
新江ノ島水族館(以下、「えのすい」)では、長年に渡りJAMSTECと共同で深海の調査・研究を行ってきました。現在、館内には「深海Ⅰ」・「深海Ⅱ」というコーナーがあり、相模湾などから採集してきた深海生物の展示や、現役を引退した有人潜水調査船「しんかい2000」をJAMSTECから借用して展示しています。
D-ARKプロジェクトは、一般の方に対して積極的に研究内容を発信していきたいという考えがあります。
調査で採集してきた生物の飼育実験を行い、元気に生きている姿をえのすいの来館者にご覧いただくことで、プロジェクトをさらに盛り上げていきたいと思います。
えのすいに展示中の有人潜水調査船「しんかい2000」
- 深海生物の展示は難しいのでしょうか?どのような技術が必要になりますか。
- 八巻トリーター
魚は浮袋があるので、深海から海面へ上げてくる途中でガスが膨張して浮袋が爆発してしまい、生きたまま持ち帰ることが困難です。浮袋を環境に慣らしていくにはたくさんの時間が必要です。今回採集できた魚も、爆発しないように2時間かけて上げてみましたが、時間が短すぎたのか生かすことができませんでした。
一方で、無脊椎動物だと体の中にガスが閉じ込められているような組織がないので持ち帰りやすいです。ただ、ヨコエビなどは水温の変化が弱点になります。生物の採集容器に保温性があれば大丈夫かもしれません。
圧力変化を極力抑えることが今後の課題になってくると考えています。そこで、採集容器に深海の圧力を保つ機能(保圧)があれば、無事に持ち帰ることができる生物も増えてくると思うので、ぜひ次回は保圧にチャレンジし、生きた魚をえのすいで展示したいです!
あと、採集後は極力、水から出さないことも大事ですね。
船上で採集した生物を世話する八巻トリーター
- えのすいで深海生物を飼育する際に気をつけていることを教えてください。
- 八巻トリーター
飼育する時は、生息していた海の環境を再現できるように、まず水温を合わせます。ただし、採集した場所の水温よりも少し低い方が良い時もあるため、毎回試しながらです。
深海洞窟のある水深500メートルの水温は13℃でした。他の海域の同じ水深よりちょっと高めの温度です。普通なら10℃を切るんじゃないかな。
深海は光のない世界だから、水族館のバックヤードでは深海生物用の冷蔵コンテナがあり、暗闇の中で飼育しています。
生き物が展示水槽へ移った後は、水槽側面にシートを貼ったり、明かりを実際に合わせて薄青くしたり、深海生物の目では感じない赤色にしています。
深海生物用の暗室
- エサはどのようなものをあげていますか?
- 八巻トリーター
今回展示しているアカサンゴスナギンチャクの仲間は、マリンスノーをエサにしているから、アミ(甲殻類)ジュースをあげています。
アカサンゴスナギンチャクが生息していた深海洞窟の入り口は、結構水の流れが早かったので、水槽の中でも水流を再現してあげたいと考えています。ポリプをもっと開いてくれると嬉しいな。
「深海展」に展示中のアカサンゴスナギンチャクの仲間
- 水温やエサに加えて、水流も大事なんですね。
最後に、D-ARKプロジェクトへの意気込みと、今後の目標を教えてください。
- 八巻トリーター
初回の調査では、大東諸島の深海洞窟に初めてアクセスすることができました。大型の無人探査機を使い、水中内視鏡や水中ドローンを活用することで洞窟の表面や奥まった部分を高画質で詳細に観察することができ、まるで自分で深海へ行っているかのような風景を見ることができ、とても感動しました。
今回小さな生き物や綺麗な魚など、残念ながら展示に漕ぎつけることができなかった生き物について、来年は少しでも展示することができたらうれしいです。
そして何より、深海洞窟での新発見とその発信を、今年度以上に頑張りたいです!!
調査風景を発信
八巻トリーターは2024年の調査中、船上から調査風景を発信してきました。
臨場感のある写真や文章に引き込まれます。ぜひ(1)から(8)までご覧ください。
八巻トリーターはじめ、水族館のみなさんのサポートがあり、無事に調査で採集した生物を展示することができました。生物の最新状況は、
水族館までお問い合わせください。