2025年7月、いよいよD-ARKの第2回目となる航海調査が行われました。
今回の記事では、昨年から改良・強化された深海洞窟用の探査機器をご紹介します。
昨年実施した初回の調査方法についてはReport vol.2とVol.4をご覧ください。
新江ノ島水族館の航海日誌ではD-ARKの航海調査の様子をいち早くお届けしています。
あわせてご覧ください!
D-ARK 航海 2025(1)出航と回航
D-ARK 航海 2025(2)初潜航とヒドロ虫集め
D-ARK 航海 2025(3)ベイトカメラとクラムボン
D-ARK 航海 2025(4)駒橋第2海山最終日、南大東島へ
D-ARK 航海 2025(5)「Χスコープ」登場と戦線離脱
D-ARK 航海 2025(6)D-ARKでの「クラムボン」初登場と初の洞窟内探検
D-ARK 航海 2025(7)「クラムボン」潜航と「ラビリンス」2度目
D-ARK 航海 2025(8)二度の「ピッグ・ノーズ」探査と深海洞窟調査ライブ中継イベント
D-ARK 航海 2025(9)新たな洞窟探しと「Cave Cam」
D-ARK 航海 2025(10)「Ⅹスコープ」再登場とベイトトラップ
2回目の調査が始まる前に、より多くの方に親しみを持ち、応援していただけるよう、D-ARKプロジェクトで開発中の小型ROV(水中ドローン)と深海内視鏡の新名称を、新江ノ島水族館のWEBページおよび館内で募集しました。
応募総数373件の中から、D-ARKメンバーによる審査を経て、小型ROVは「DroSea(ドロシー)」、深海内視鏡は「Xscope(カイスコープ)」に決定!
これまでの深海調査で使用してきた機器は、深海洞窟を調査するには大きすぎて使えません。そこで、D-ARKでは深海洞窟のための新たな探査機器を開発しています。
一つ目は、小型の無人探査機(ROV)です。「水中ドローン」と呼んだ方が、聞き馴染みがあるかもしれません。
通常の深海調査でも活用している無人探査機(「KM-ROV」) に、この水中ドローンを抱えさせて潜航します。深海洞窟を発見したら、無人探査機から水中ドローンを出動させて、洞窟の内部を調査します。水中ドローンが撮影した映像は、船上でリアルタイムに観察することができます。
昨年の初回調査では、まず「大東諸島の深海に本当に大きな洞窟が存在するのか?」という探索から始めたため、安全面を考慮し、洞窟の入口付近のみの調査にとどまりました。
今年は水中ドローンと、それを支える無人探査機の両方にケーブルを巻き取るための装置(ウインチ)を取り付け、長いケーブルを使えるようにすることで、より洞窟の奥深くを調査できるように改良しました。
さらに、水中ドローンには生物を採集できるスラープガン(水中掃除機)も備えています。昨年も希少な深海魚「ホラアナヒスイヤセムツ」など、深海洞窟付近でさまざまな生物を採集することができました。今年は、さらに洞窟奥深くに潜む生物の採集に挑みました。
深海洞窟付近の小さな洞穴を調べるため、医療用の内視鏡から着想を得て、専用の深海内視鏡「Xscope(カイスコープ)」を開発しました。
この装置は、無人探査機のアームで操作し、先端に取り付けられたカメラで穴の内部を撮影します。昨年からの改良により、カメラユニットを動かせるようになったことで、より広い範囲を観察できるようになりました。装置の先端には透明なアクリル製のドームが取り付けられ、その中にジンバル(回転台)を使ってカメラを設置しています。この仕組みによって、カメラを上下左右に360度自由に動かすことができ、内部の様子を立体的に見渡すことが可能になりました。
さらに、深海内視鏡の先端に吸い込み口を設けて、そこからポンプで海水を採取し、環境 DNA(eDNA)解析をすることによって、カメラの前に姿を現さない生物の存在も調べることができます。
洞窟内を夜間含めて長期間観察するために、海底に設置可能な専用カメラ「Cave Cam(ケーブカム)」を開発しました。
この装置には360度カメラと、暗闇を照らすLEDライトが搭載されています。小型ROV「DroSea(ドロシー)」がCave Camを運び、深海洞窟の内部に設置する予定です。
Cave Camの運用は今回が初の試みとなりました。天候や機器トラブルの影響により、狭い洞窟内部への設置は叶いませんでしたが、試験的に海底へ設置してみたところ、大型のサメがCave Camの様子を見にやって来てくれました。
360度カメラならではのユニークな映像をお届けできる日を、どうぞお楽しみに!
初回調査では、「そもそも大東諸島の海底はどのような環境なのか?」「深海に本当に洞窟はあるのか?」といった手探りの挑戦から始まりました。そして私たちの期待どおり、海底には大小さまざまな穴が数多く存在しており、特に南大東島・北大東島の沿岸で、それぞれ大きな深海洞窟を発見することができました。
約1年間の準備期間を経て、今年はさらに洞窟の奥深くの調査に試みました。調査の成果は今後、WEBやイベントなどを通じてお届けしていきます。