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「深海」とは一般的に植物プランクトンが
光合成できる限界とされている
「水深200m」より深い海のことで、
海洋全体の95%を占めています。

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深海はどんなところ?

深海は、「高圧」「低温」「暗黒」という過酷な環境です。

高圧の世界

高圧の世界

圧力(水圧)は、10mもぐるごとに1気圧ずつ増えていきます。水深1,000mで約101気圧、水深6,500mでは約651気圧で、1cm2に約650kgの力がかかります。

例えると、小指の先にお相撲さん約4人が乗っかるほどの圧力となります。

低温の世界

低温の世界

深海はとても寒い世界です。
深海の温度(水温)は水深約1,000mで2~4℃となり、それより深い海でもほぼ一定です。しんかい6500の船内は暖房器具がないため、乗船員は潜航服を着て体温を保ちます。

暗黒の世界

暗黒の世界

深海は太陽の光が届かない暗黒の世界です。
太陽の光は、水深200m程度で海面の0.1%になり、水深1,000m前後では100兆分の1程度のわずかな光になります。これは生物が検知できる光の限界だとされています。その先は、完全な「暗黒の世界」です。

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どうやって深海を調査するの?

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深海の調査には無人探査機などの水中ロボットを用いるのが一般的ですが、人間が直接観察することの重要性から、有人の潜水調査船も活躍しています。 JAMSTECが保有する有人潜水調査船「しんかい6500」は、世界トップクラスの潜航能力(最大潜航深度6,500m)を有し、日本近海だけでなく世界中の深海で調査を行っています。

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海中では、電波は使用できません。その代わりに「音波」を使います。
海中での音は、地上にくらべてはるかに遠くまで伝わります。クジラなどの海棲哺乳類は音を使い、時には数千kmという長い距離でコミュニケーションをしているといわれています。
深海の調査でも音波で海底の地形を調べたり、潜水船と母船との通話や画像通信に使用しています。

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海底の地形

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海底には、陸上と同じように山もあれば谷もあります。
急な崖があったり、割れ目のようなものがあったり、冷えて固まった複雑な形をした溶岩も見ることができます。
そして、陸上では見ることのできない大規模な海溝や海嶺(山脈)が見られるのも深海底の特徴です。
また、1977年には米国の潜水調査船によって海底から200~400℃にもなる熱水が噴出している「熱水噴出孔」がはじめて観察されました。この熱水に含まれる成分の一部が堆積し、煙突状(チムニー)の不思議な地形をつくり出しています。

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深海の生物たち

深海には、餌が少ないため、あまり生物がいないと言われてきました。
しかし実際には、数多くの生物が確認されており、見つかっていない生物もまだまだいるようです。

確認されている深海の生物の中には、餌が少ないためにエネルギーをできるだけ消費しないようにゆっくりとした動きをする生物がいます。代表的なものは、ソコダラ類やギンザメ類です。三脚魚と呼ばれるナガヅエエソは、3本の長いヒレで海底に立って、泳がずにじっとしていることが多い魚です。
反対に、餌が少ないため活発に動く生物もいます。サンゴ礁などの浅い海でよく観察されるナマコ類は、浅海ではあまり動かない印象がありますが、深海では餌を求め、とび跳ねたり、泳いだりします。

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化学合成生態系

太陽の光の届かない深海底には、太陽エネルギーにほとんど依存しない生物がいます。その生物は、太陽エネルギーの代わりに熱水に含まれる硫化水素やメタンなどをエネルギーに変えることのできる「化学合成細菌」に依存しています。このような生態系は、「化学合成生態系」と呼ばれています。
この生態系を構成している生物群「化学合成生物群集」には、熱水噴出孔生物群集、湧水生物群集、鯨骨生物群集があります。
地球上で最初の生命(初期生命)が誕生した場所は、熱水噴出孔だと言われています。熱水噴出孔生物群集を研究することは、初期生命の進化の道のりを解き明かすだけでなく、地球外の生命の可能性を探る手がかりともなり得ます。

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深海のデブリ

深海は、浅い海と一つながりの「海」の一部です。
人為起源の海洋ごみが深海の環境にどのような影響を与えているのかは、誰もが持つ疑問である一方、 海面を漂流したり海岸に漂着するごみと比べ、深海の状況を観察する機会は非常に限られるため、現在でも未解明な点が数多くあります。

このような中で、JAMSTECがこれまで深海調査で撮影してきた映像に記録された「深海ごみ」の姿は、深海の環境を把握するための貴重なデータです。
海底に沈んだ深海ごみの周囲では深海生物が生息する様子などが観察され、深海の環境にごみが及ぼす影響の一端を伺うことができます。