2013年 2月 5日
独立行政法人海洋研究開発機構
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)は、平成25年1月18日より海洋調査船「かいよう」による研究航海を実施し、平成22年12月に地球深部探査船「ちきゅう」により東南海地震の想定震源域である紀伊半島沖熊野灘の海底下の掘削孔に設置した長期孔内観測装置(※1)を、同海域において展開・運用している地震・津波観測監視システム(※2 DONET)に接続し、観測装置で取得したデータ(歪、温度、圧力、地震波等)をリアルタイムで受信することに成功し、データの品質に係る基本的な検証を行い、今後の研究活動等に活用可能な観測が行えることを確認しました(図1)。
海底ケーブル観測網に海底下の掘削孔内の観測装置を接続してリアルタイムでデータを取得する取組は世界初となります。これにより、微小な地震動や地殻変動に伴う海底下の歪や温度、圧力等の変化と巨大地震発生との関連性に関する研究が可能となり、地震発生メカニズム解明に資する知見の獲得が期待されます。また、陸上や海底面に設置する観測装置では捉えにくい微小な地震動や地殻変動をリアルタイムで捉えることができ、今後の防災・減災対策へのデータ利用が期待されます。
今後、長期孔内観測装置から得られるデータの品質に係る詳細な検証を行っていくとともに、東南海地震の想定震源域で地震観測を行っている関係機関へのデータ配信に向けて調整を進めていく予定です。また、同海域の他地点においても長期孔内観測装置を設置し、同様にDONETに接続していく予定です。
※1 過去に設置した長期孔内観測装置
統合国際深海掘削計画(IODP)第332次研究航海(平成22年10月~12月)において、地球深部探査船「ちきゅう」により掘削した紀伊半島沖のC0002地点(水深1938m)(図2)において、海底下約1000mに達する掘削孔内の約780-980mの深度に複数のセンサー(歪計、温度計、間隙水圧計、広帯域地震計)を設置した。
※2 DONET
文部科学省補助事業により、東南海地震の想定震源域である紀伊半島沖熊野灘に設置した海底ネットワーク観測システム。東南海地震を対象としたリアルタイム観測システムの構築及び地震発生予測モデルの高度化等を目的とする。各観測装置から得られるリアルタイムデータは気象庁と防災科学技術研究所に配信されている。
図1 DONETに接続した長期孔内観測装置内の広帯域地震計(Broadband X,Y,Z)、歪計(Strain)、傾斜計(Tilt X,Y)、間隙水圧計(Pore-fluid Pressure)による長周期地殻変動データ(2013/1/27 ~2013/1/28)。潮汐の影響による海底地殻変動が捉えられている。
図2 DONETと長期孔内観測システム位置図と長期孔内観測システムのセンサー構成図
長期孔内観測システムは、図中のC0002(尾鷲市から南方90kmの沖合、水深1938mの地点)に設置している。全長約1000mの観測システムで、深度980mの部分の間隙水圧計、深度900mから920mの部分の歪計、広帯域地震計、傾斜計、深度830mから780mの部分の温度計のセンサーから構成されている。