2013年 4月 30日
独立行政法人海洋研究開発機構
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)は、平成25年4月21日より深海調査研究船「かいれい」による研究航海を実施し、平成24年7月に地球深部探査船「ちきゅう」による研究航海「東北地方太平洋沖地震調査掘削-Ⅱ」で設置した長期孔内温度計を無人探査機「かいこう7000-II」により、4月26日夜に回収しました。また、回収した長期孔内温度計からデータを取り出したところ、断層付近を含む地層温度が計測されていることを確認しました。
この長期孔内温度計は、統合国際深海掘削計画(IODP)第343次研究航海の一環として、東北地方太平洋沖地震で海底地形が最も変動した海溝軸付近の地点の掘削孔内に設置され、大きく滑ったプレート境界断層及びその付近の地層の温度変化を約9か月間記録しています。
今後、記録されたデータの検証・解析を行い、巨大地震発生時にプレート境界断層が滑ったことで生じた摩擦熱の推定を行います。その結果を、すでに取得されている地層の物性データ等と合わせて、巨大地震発生時のプレート境界断層の摩擦特性を分析し、巨大津波を発生させた海溝軸付近でのプレート境界断層の滑りのメカニズム解明に取り組んでいく予定です。このように、海溝型地震において地震発生後早期にプレート境界断層の温度計測を実施することは世界で初めての試みです。
なお、研究成果については、論文等としてまとまった段階で公表します。
参考:長期孔内温度計回収作業後の深海調査研究船「かいれい」の予定
なお、気象条件や調査の進捗状況によって変更となる場合があります。
長期孔内温度計は、平成24年7月に宮城県牡鹿半島沖合約220キロメートルの日本海溝海溝軸付近の海域(北緯37度56分 東経143度55分)に設置された。
長期孔内温度計は、全長約820mあり、55点の高精度温度計(2種類の温度計を使用、±0.002℃と±0.1℃の精度で測定可能)で構成されている。高精度温度計は、プレート境界断層及びその付近に集中して配置されている。